<社説>沖縄の基地負担 国民全体で議論すべきだ


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 いよいよ「人ごと」ではなくなってきた。沖縄の基地負担に関して本土の知事に、そんな認識が生まれている。

 新潟県の米山隆一知事は12日の記者会見で、米軍普天間飛行場に配備されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練を新潟県内に受け入れることに前向きな姿勢を示した。
 米山氏は本紙インタビューに、米空軍のCV22オスプレイが米軍横田基地への配備に向けて日本に到着したことについて「今までは日米地位協定の話は皆なんとなく人ごとだった。結局、自分の問題だと今分かった。配備を自分の問題と捉えて安全にしてもらわないといけない」と述べていた。地位協定改定に取り組む「いいタイミング」とも主張した。
 横田基地に配備されたオスプレイは新潟県を含めた区域で訓練する。新たに負担の当事者になる立場から発したのだろう。この認識の変化は注目に値する。
 米山知事は「自分はリスクを負わないで安全保障を享受して、(沖縄の基地負担は)仕方ないと言う権利はない」「沖縄に負担してもらっているリスクを他の県が取れないわけはない」という認識は、本質を突いている。本土の人々には、この認識こそが問われているのである。
 1995年の少女乱暴事件以降、沖縄の県知事は保革や党派にかかわらず、全国渉外知事会などで沖縄の基地負担を全国で分かち合うよう訴えてきた。しかし、その訴えを真摯(しんし)に受け止め沖縄の基地を受け入れる努力をした知事は皆無に等しい。
 過去に橋下徹氏が大阪府知事時代、普天間移設問題に絡み、戦闘機の一部訓練を関西空港で受け入れる案について「受け入れるわけではないが、議論は拒否しない」と述べたことがある。しかし議論はその後、うやむやになった。
 米山知事は米軍普天間飛行場の県外移設要求について「どこにすべきかは言えない」としつつも「『このリスクを取れると言うなら、あなたたち(本土の人)だって取れるはずだ』と言うのは、そうだとしか答えようがない」と述べ、国民全体の議論を求めている。沖縄の基地負担の問題が国民的議論にならないことが、県民の民意を無視し、辺野古新基地建設を強行する政府の姿勢を後押ししているともいえる。
 そんな状況に強い危機感を抱いて活動しているのが「沖縄の基地を引き取る会」だ。現在、大阪、福岡、長崎、新潟、東京、山形、滋賀、大分、兵庫、神奈川の計10カ所で運動を展開している。沖縄への構造的差別をなくし、植民地主義と決別するという問題意識に根差した運動である。この意識が広がることを期待したい。
 欠陥が指摘されているオスプレイが全国で飛び交うようになる今こそ、沖縄の負担を自分ごととして捉え、負担を分かち合うための国民的議論を起こす時だ。