<社説>比嘉選手無期限停止 「至宝」の再起待っている


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 日本ボクシングコミッション(JBC)は比嘉大吾選手へのボクサーライセンス無期限停止処分を決めた。

 比嘉選手は体重超過で世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王座を剝奪され、ファンの期待を裏切った。世界戦の計量失敗は日本選手初の失態である。プロであり、重い処分も致し方ない。
 JBCは厳罰を科す一方で、停止処分解除は「定期的なコンディション管理報告、健康状態報告等を受け総合的に勘案してJBCが決定する」とし、再起への道も閉ざしてはいない。
 安河内剛JBC事務局長は「ボクシング界に与えたダメージは大きく、懲罰の意味があって処分が重くなった。一方でボクシング界の宝である選手なので、どう救済するかも考えた」と説明している。比嘉選手の将来を考えた、厳しくも温情のこもった処分を評価したい。
 比嘉選手は3度目の防衛戦を前に、胸囲は97センチと厚みを増していた。ミドル級世界王座を初防衛した村田諒太選手の98・5センチに迫る大きさである。トレーニングを積んだ結果、10階級上の世界王者とほぼ同じ胸囲となり、削ぎ落とす部分がほとんどなかったのだろう。
 2月の防衛戦後のピーク体重62キロから10キロ以上の減量に取り組んだが、計量をパスできなかった。
 試合を禁止されることはボクサーにとって辛いことである。だが、ボクサーライセンス無期限停止処分は引退勧告ではない。停止処分の解除は、比嘉選手がボクシングと真摯(しんし)に向き合う姿勢を貫けるかにかかっている。まだ22歳であり、挽回する時間は十分ある。
 比嘉選手は、フライ級では規格外の左の重いストレートとジャブを大きな武器に、闘争心むき出しのボクシングスタイルでファンを魅了してきた。努力次第でさらに強くなる逸材であることに変わりはない。
 「至宝」の再起を多くのファン、関係者は待っている。比嘉選手はそのことを忘れないでほしい。再びリングに上がる日に備え、トレーニングと体調管理に万全を期してもらいたい。今回の経験を糧に再び世界の頂点を目指せば、絶対王者として君臨することも夢ではない。
 比嘉選手が所属する白井・具志堅スポーツジム会長で元世界王者の具志堅用高氏は、カンムリワシと呼ばれた。
 比嘉選手は2017年5月に王座を奪取した際「カンムリワシないん(になる)」と話した。具志堅氏が持つ世界王座13回連続防衛の日本記録を乗り越えることを期待したい。
 所属ジムは「処分を厳粛に受け止め、選手の健康管理等を徹底する所存」などとコメントを出している。減量失敗はジムにも重い責任がある。比嘉選手の再起を力強く支え、復活の道を後押ししてほしい。