世界自然遺産登録と環境破壊が前提の米軍基地の共存はあり得ない。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)は4日、政府が世界自然遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、登録延期を勧告した。6月末からのユネスコ世界遺産委員会での登録は極めて厳しい状況だ。

 登録延期の理由は二つある。判断基準の「生態系」で「資産の分断等において、生態学的な持続可能性に重大な懸念がある」ことを理由に、推薦地としての完全性の要件に合致しないと判断された。分断されている地域があると指摘している。
 もう一つは「生物多様性」の基準で「(米軍)北部訓練場の返還地も推薦地の価値と完全性を大きく追加するもの」と評価し、返還地が推薦地域に入っていないことを挙げた。つまり返還地が生物多様性の観点から極めて重要であると判断し、推薦地域に含めるよう促したのだ。
 IUCNの勧告は「登録」「情報照会」「登録延期」「不記載」の4区分だ。今回の登録延期は、より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要となる。推薦書を再提出し、その後に約1年半をかけて再度諮問機関の審査を受ける必要がある。
 登録延期の理由になった「資産の分断」とは何を指すのか。会見で北部訓練場かを問われた環境省は「IUCNに聞いてみないと分からない」と断定を避けた。
 北部訓練場は2016年12月に過半の4010㌶が返還された。しかし現在も3500㌶が残されている。訓練場がやんばるの森林地域を分断しているのは厳然たる事実だ。さらに16年には6カ所のヘリパッド(ヘリコプター発着場)が新たに建設された。
 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなどが頻繁に離着陸を繰り返し、生態系に悪影響を及ぼしているのは間違いない。IUCNの「資産の分断」が北部訓練場を指す可能性は否定できない。
 世界自然遺産の推薦地には遺産保護のために周囲に設ける緩衝地帯(バッファゾーン)が不可欠だ。推薦地に隣接する北部訓練場の位置付けも懸念材料となっている。
 会見で環境省の担当者は勧告の中で北部訓練場が「緩衝地帯に含まれていないと書かれている」と説明し、一方で「バッファゾーンとしての機能を果たしているというニュアンスのことも書かれていたと思う」と説明している。
 いずれにしても緩衝地帯の要件を満たすためには、残された北部訓練場の全面返還を実現させ、国立公園化することこそ現実的だ。そうすれば資源の分断も解消できる。
 勧告は「世界的な絶滅危惧種の保護のために高いかけがえのなさを示す地域を含んでいる」と指摘している。世界自然遺産と軍事基地は相いれない。全面返還すべきだ。



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