2016年12月に部分返還された米軍北部訓練場跡地の土壌から、毒性が強く国内で使用が禁止されている農薬のDDT類が検出された。田代豊名桜大教授の調査で判明した。沖縄防衛局は返還後に汚染調査を実施したが「比較的良好な土壌および水質環境が保たれているとの結果を得ている」との認識を示していた。調査は不十分だといわざるを得ない。
防衛局は8カ月かけて土壌と水質の汚染調査を実施した。しかし調査したのは土壌汚染の蓋然(がいぜん)性の高い場所と判断した過去のヘリコプター墜落現場やヘリ発着場などに絞られ、範囲は限定的だ。今回汚染が見つかった場所は調査対象地に含まれてなく、DDTは調査項目にも入っていない。
検出されたDDTは環境省の環境管理指針値を下回った。しかしDDTは自然界に存在しない。教授によれば、殺虫剤として散布された程度では検出されない数値だ。
検出された現場にはタイヤや金属類などの廃棄物が散乱していた。DDTが他の廃棄物とともに廃棄された可能性は否定できない。
検出された場所が防衛局の調査地点に含まれていなかったのは、米軍からの情報が十分でないことも起因している。防衛局側は米軍に対して、基地としての使用状況を照会している。
過去に有害物質が流出した事実の有無や廃棄物の処分の有無などを尋ねたが、米軍はほとんどの質問について「記録はない」と回答している。しかし廃棄物の処分についてだけは「処分または一時保管を行ったことはない」ときっぱり否定している。記録がないにもかかわらず、なぜ廃棄物を処分していないと断言できるのか。実に不可解だ。
汚染の可能性を探るためには基地としての使用履歴の把握が欠かせない。有害物質を排出する可能性がある施設などの立地の有無を調べる必要がある。
これについても防衛局の調査報告書には、県がまとめた冊子「沖縄の米軍基地」に記されている程度の基地の概略しか記されていない。米軍から履歴に関する情報の提供を受けた形跡は見当たらない。これでは十分な調査が実施できるはずもない。
米軍は米国内の基地では過去の汚染実態を調査し、除染する組織を配置している。なぜ沖縄の基地では「記録がない」のか。二重基準ではないか。
日米地位協定4条で、米軍に返還跡地の原状回復義務を負わせないことが明記されている。米軍は汚染の浄化責任を取らなくていい。だからこうした結果を引き起こすのだ。
汚染が見つかった以上、防衛局は北部訓練場の調査をやり直す必要がある。汚染を疑い、調査範囲と調査する有害物質の項目を大幅に広げるべきだ。