<社説>カジノ法案強行採決 賭博の合法化なぜ必要か

 安倍政権はどこまで強権的なのか。国の形を根本から変える重要法案を十分な論議もせず、数の力で押し切る。何度となく繰り返された光景をまた見せつけられた。

 カジノ解禁を柱とする統合型リゾート施設(IR)整備法案が、衆院内閣委員会で自民、公明、日本維新の会により強行採決された。
 19日の本会議で衆院を通過させ、会期を延長して今国会で成立させる方針である。
 カジノ法案には多くの疑問や不安が残る。
 そもそも日本にカジノは必要なのか。刑法が禁じている賭博を合法化する法案だ。
 政府は成長戦略の柱に位置付け、安倍晋三首相は「世界中から観光客を集める」と強調する。だが、ギャンブルで負けた人の不幸を踏み台にしてもうかる仕組みのカジノが、国家の成長戦略にふさわしいのか。大いに疑問だ。
 政府は経済効果の試算もせずに、プラスの側面ばかりをアピールする。負の側面も併せて考えるべきだが、その議論と説明は欠落している。
 懸念されるのはギャンブル依存症の増加だ。厚生労働省の推計では、日本は人口の3・6%、約320万人に依存症の疑いがある。競馬や競輪などの公営ギャンブルやパチンコ・パチスロが多く、先進国の中では突出した数値だ。
 法案では依存症対策として日本人客の入場を「週3回・月10回まで」「入場料6千円」「マイナンバーカードによる本人確認」と規定した。
 政府は「世界最高水準の規制」と自画自賛するが、年間120回も利用できること自体がもはや依存症を招くと言えよう。ざる法でしかない。
 法案は、カジノ事業者が入場客に金銭を貸し付けることも認めた。客を借金漬けに追い込み、依存症を助長するもので専門家も批判している。
 政府は訪日外国人客の増加も法案の効果として挙げるが、腑(ふ)に落ちない。既に訪日客は過去最高を更新し続けている。賭博ではなく、日本独自の自然や文化、観光資源の魅力を向上させることの方が、はるかに有効ではないか。
 疑問だらけなのに、衆院内閣委はわずか18時間で審議を打ち切った。カジノ法案は全251条に及ぶ。200条を超える新規立法は1997年の介護保険法以来で、当時の委員会審議は50時間だった。いかに議論が尽くされず拙速だったかがうかがえる。
 公明は2016年のIR推進法の本会議採決では山口那津男代表ら約3分の1の衆参議員が反対したが、今回は全員が賛成に回った。支持者に賭博へのアレルギーが強いため、来年の参院選や統一地方選への影響を最小限に抑えたいとの狙いが透けて見える。
 3月の共同通信世論調査ではカジノ解禁に反対が65%で賛成27%を上回った。大半の国民が強い懸念を抱いている。なぜ急ぐのか。国会はもっと時間をかけて本質的な議論を重ねるべきだ。