名護市数久田の作業小屋で21日に見つかった銃弾のような物について、県警は28日、重火器から発射された銃弾であると発表した。
小屋は米軍キャンプ・シュワブに近接した場所にある。名護市内では、過去に6件の流弾事故が起きており、このうち5件はキャンプ・シュワブのレンジ(射撃場)10から発射されていた。
そもそも、このような危険な射撃場が廃止されないまま、いまだに存続していること自体、非常識の極みだ。沖縄以外ではまずあり得ない。
重火器を使用するのは米軍をおいて考えにくいこと、これまでにも数久田周辺で流弾事故が相次いでいたことなどから、今回も基地から飛んできた可能性が極めて大きい。
再発を防止するには、根本原因となる施設をなくすことだ。民間地域に実弾を撃ち込む恐れのある射撃場は廃止するしかない。政府は、国民、県民の生命を守る立場から、危険な演習場を永久に閉鎖するよう米国に求めるべきだ。
米軍は琉球新報の取材に対し、予防措置としてレンジ10を一時的に閉鎖すると回答した。銃弾との因果関係を疑っているからこそ、射撃場の閉鎖に言及したのだろう。
気になるのが捜査の行方だ。警察は今もって発射元を突き止めるには至っていない。それどころか銃弾と特定するだけで1週間を要した。
県警は「やるべき措置をやった結果、発表に至った」と述べているが、場合によっては人命に関わりかねない重大事案への対応としては、悠長な印象を受ける。
回収された銃弾についても「捜査に支障が出る」として28日の時点では公表を控えた。むしろ、発生直後に銃弾の写真を公開していれば、広く情報が集まり、捜査の進展に役立ったかもしれない。
いずれにしても、どこから発射された銃弾なのかが特定されず、責任の所在が明確にされないまま捜査を打ち切る事態だけは絶対にあってはならない。
とはいえ、県警だけではどうにもならない問題が厳然として横たわる。不平等な日米地位協定の存在だ。公務中の事件の第一次裁判権を米軍側に認めており、県警が基地内に立ち入るにも、施設管理権を有する米軍側の同意を得なければならない。
2009年の金武町伊芸被弾事件の際、米軍は全面協力を約束しながら1年近く県警の基地内立ち入りを認めなかった。
米軍の協力が得られるかどうかは、日本政府の対応いかんにかかっている。
いつ銃弾が飛んでくるかも分からない中では、誰も安心して生活できない。
米軍が「良き隣人」として認めてもらいたいのなら、まず危険な射撃場を、一時しのぎではなく、恒久的に廃止することだ。そのうえで、県警の捜査に全面的に協力し、真相解明に努めてもらいたい。