<社説>土砂投入阻止県民大会 国に美ら海汚す権利ない

 雨が強く降り続いたにもかかわらず、途中で会場を後にする人はほとんど見当たらなかった。傘を差したり、雨具を着たり、あるいは雨をそのまま受け止めながら、人々は登壇者の発言にじっと耳を傾け続けた。「辺野古新基地NO!」「県民はあきらめない!」と書かれた紙を掲げ、不断の決意を表明した。

 美しい大浦湾の海を汚させないため、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に反対する「土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会」が那覇市の奥武山陸上競技場で開催された。
 集まった人は主催者発表で約7万人。昨年8月に同じ場所で開催された新基地阻止県民大会の約4万5千人を大きく上回った。小さな子どもの手を引く若い夫婦、つえを突きながら歩くお年寄り、中高年、大学生、高校生、小中学生の姿も見られ、幅広い世代が参加した。
 「山の日」の祝日に、なぜこれほどまで多くの人が集まったのか。それは大会決議にあるように「県民の命と暮らし、沖縄の地方自治と日本の民主主義と平和を守るため、この不条理に対し全力であらがい続ける」ためにほかならない。そしてもう一つ理由がある。
 直前まで参加の意思を示していたものの、会場に姿を見せなかった人物がいる。前回の大会で「子や孫のために、先祖の思いを胸に刻み、命の限り頑張ろう」としまくとぅばで呼び掛け、最も大きな拍手を受けた翁長雄志知事だ。
 3日前に膵臓(すいぞう)がんでこの世を去り、参加はかなわなかった。参加者の多くが翁長知事を悼む気持ちを抱きながら足を運んだはずだ。
 登壇者の多くが異口同音に口にした言葉がある。「翁長氏の遺志を受け継ぐ」だ。翁長知事は2014年の県知事選で、辺野古新基地建設阻止を公約に掲げて初当選した。
 以来、4年近くにわたって「あらゆる手段を使って新基地を阻止する」と繰り返してきた。そして7月27日には辺野古埋め立て承認の撤回を表明した。参加者は翁長知事の新基地阻止の固い決意の継承を誓った。
 大会の統一色は「青」と決められ、参加者には青色を身に着けるよう呼び掛けられた。このため会場は青色に染まった。大浦湾の青く輝く海を守り抜く強い意思を示すためだ。
 これに対して沖縄防衛局は、8月17日の土砂投入を通知している。大浦湾を埋め立てる本格的な作業に着手する。沖縄の人々の宝である「美ら海」を汚す権利など、国にあろうはずがない。
 会場に降り注ぐ雨を「涙雨」と呼ぶ人がいた。しかしそれは決して「絶望の涙」ではない。翁長知事を失った悲しみを乗り越え、その遺志を引き継ぎ、新基地建設阻止を誓う「希望の涙」だ。