<社説>工事中断損害金 沖縄への恫喝そのものだ

 損害賠償をちらつかせながら県に翻意を迫る。恫喝(どうかつ)以外の何物でもない。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を巡り、県が埋め立て承認を撤回した場合、1日当たり約2千万円の損害が発生するとの見積もりを政府がまとめた。撤回に関する訴訟で政府が勝てば、県への損害賠償請求を検討する構えだ。累計で数億円に達する可能性があるという。
 本をただせば、2010年の知事選で「日米共同声明を見直し、(普天間飛行場の)県外移設を求める」と公約した仲井真弘多前知事が13年12月に政府による埋め立て申請を承認したことに端を発する。
 翌14年11月の知事選で普天間飛行場の国外・県外移設を公約した翁長雄志知事が仲井真氏に10万票近い差をつけて当選する。翁長知事は、民意をバックに、埋め立て承認を取り消したが、政府は前知事の承認を根拠として新基地建設を強行したのである。
 例えて言えば、土地の持ち主は変わっているのに、前の地主の承諾を得ているからと、家を建てるようなものではないのか。損害賠償を請求したいのは、むしろ、沖縄の方だ。
 県が埋め立て承認を撤回すると、工事を進める法的根拠がなくなり、工事がストップする。政府は対抗措置として撤回の効力を凍結する執行停止を裁判所に申し立てる方針だ。これが認められれば、数週間で工事は再開するとみられる。1日で約2千万円と見積もられたのは、この間の人件費、資財調達費など遅延に伴う損害額のことだ。
 政府にとって、裁判所が申し立てを認めるのは織り込み済みであるかのように映る。日本は三権分立であり、司法権を持つのは裁判所だけだ。国の主張が100パーセント通ると考えているのなら、司法軽視のそしりは免れない。
 新基地建設で辺野古の海に土砂が投入されると、大浦湾の生物多様性は壊滅的な打撃を受ける。埋め立てによって失われる自然環境は元に戻せない。工事の遅延よりも、環境破壊による損害の方がはるかに甚大だ。
 そもそも、国土の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍専用施設面積の70%が集中していることに根本的な問題がある。過重な負担を強いられた県民は、日常的に軍用機の騒音にさらされ、米軍絡みの事件・事故に脅かされている。
 沖縄以外の99・4%の国土に、わずか480ヘクタールの普天間飛行場さえ移す場所がないと言うのは、政府の無能、無策ぶりの表れだ。現在背負っている米軍基地の重さから見れば、県内移設を伴わない普天間飛行場の返還はささやかな要求でしかない。
 政府は、承認撤回阻止で県に圧力をかけるようなエネルギーがあるのなら、基地負担の平準化に注力してもらいたい。この間の強硬な姿勢が本当に正しいやり方なのか、良心に問うてみることだ。