<社説>新知事に玉城氏 新基地反対の民意示した


社会
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 翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選挙は、名護市辺野古への新基地建設反対を訴えた前衆院議員・玉城デニー氏(58)が、安倍政権の支援を受けた前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54)を大差で下し、初当選した。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古への新基地建設について、玉城氏は「辺野古に新たな基地は造らせない」と主張、知事の持つあらゆる権限を行使して阻止する姿勢を示した。
 佐喜真氏は辺野古移設を推進する安倍政権の全面的な支援を受けながらも、その是非について言及を避け続けた。
 玉城氏が当選したことで、新基地建設に反対する沖縄県民の強固な意志が改めて鮮明になった。政府は、前回、今回と2度の知事選で明確に示された民意を率直に受け止め、辺野古で進めている建設工事を直ちに中止すべきだ。
 沖縄には、普天間飛行場の4倍以上の面積を有する嘉手納基地をはじめ在日米軍専用施設面積の7割が集中している。県内移設を伴わない普天間飛行場の返還は決して法外な要求ではない。
 今選挙で政府・与党は菅義偉官房長官、自民党の二階俊博幹事長、竹下亘総務会長、公明党の山口那津男代表らが次々と沖縄入りし、総力を挙げて佐喜真氏を応援した。
 政権の動きに呼応するかのように、ネット上では玉城氏に対する誹謗(ひぼう)中傷やデマが拡散された。模範となるべき国会議員までが真偽不明の情報を発信した。
 沖縄県知事選で玉城氏ほど、いわれのない多くの罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられた候補者がかつていただろうか。有権者の中には、デマを本当のことだと思い込んだ人もいたかもしれない。
 戦後、米軍統治下にあった沖縄で直接選挙によって住民の代表を選ぶ主席公選が初めて認められたのは1968年のことだ。自治権の拡大を求める沖縄住民が勝ち取った権利だった。
 その際、自民党は川島正次郎(副総裁)、福田赳夫、中曽根康弘の各氏ら有力者を次々と送り込み、保守側の候補者を強力に支援した。結果は、革新の屋良朝苗氏が当選している。あれから50年。政府与党は知事選に介入し敗れた。
 振興策で思い通りになると考えていたとすれば、県民を軽んじた話ではないのか。
 政権与党対県政与党という対立構図の中で、県民は翁長県政の路線継承を望み、安倍政権に「ノー」を突き付けた。「政府の言いなりではなく、沖縄のことは沖縄で決める」という強い意志の表れだ。
 県は前知事による辺野古の埋め立て承認を8月31日に撤回した。政府は法的対抗措置を取る構えを見せている。
 この期に及んで、なおも新基地を押しつけるというのなら、民主主義国家を名乗る資格はない。政府は沖縄の揺るぎない民意を尊重し、新基地建設を即刻断念すべきだ。