第4次安倍改造内閣が始動した。当選回数を重ねながらも閣僚経験のない「待機組」に配慮し、12人が初入閣となった。女性閣僚は片山さつき地方創生・女性活躍担当相だけで、男女共同参画の流れに逆行する組閣だ。
最も驚いたのは麻生太郎副総理兼財務相を留任させたことだ。財務省は、森友学園を巡る決裁文書改ざんという前代未聞の不祥事を引き起こした。一昔前なら大臣の辞任が確実視される事案だ。側近に甘い安倍晋三首相のカラーが色濃く出た。
財務省が大阪府の国有地を学校法人「森友学園」に、鑑定評価額よりも約8億円安く売却したことが発端だった。開校予定の小学校の名誉校長は安倍昭恵首相夫人であり、特別扱いが強く疑われている。売却に関する決裁文書改ざんや書類廃棄は当時の理財局長が主導して進められた。
それだけではない。4月には当時の事務次官が女性記者に対するセクハラで辞任した。この時、麻生氏は「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろな意見がある」と言い放った。二次加害とさえいえる。発言からは閣僚としての見識、品位がみじんも感じられない。
一連の不祥事を通して明らかになったのは、麻生氏には財務省を率いるだけの指導力が欠けているということだ。続投させたのは首相が文書改ざん問題を深刻に受け止めていない証左といえる。
麻生氏とともに舌禍が懸念されるのが桜田(さくらだ)義孝(よしたか)五輪相だ。2016年に自民党本部で開かれた会議で従軍慰安婦について「職業としての売春婦だった。それを犠牲者だったかのようにしている宣伝工作に惑わされすぎだ」と発言し、間もなく撤回した。
当時、菅義偉(すがよしひで)官房長官は「政府や党の(慰安婦問題への)考え方は決まっている。そうしたことを踏まえて発言してほしい」と苦言を呈した。
五輪相は大会の円滑な準備・運営に関する施策を推進する重要なポストである。アジア諸国の反発を招かないよう十分に注意すべきだ。
岩屋毅(いわやたけし)防衛相はかつて、自民党の国会議員でつくる日米地位協定改定を目指す議連の副会長を務めた。地位協定がドイツ、イタリアに比べて駐留国に著しく不利である点も十分に理解しているだろう。ぜひとも協定の見直しを提起してほしい。
沖縄にとって唯一、期待できるのは宮腰光寛(みやこしみつひろ)沖縄担当相だ。県内の全ての有人離島に足を運んだという。農政通として知られ、基幹作物のサトウキビにも精通している。振興策と基地のリンク論を「予算とは直接リンクしない」と一蹴した。玉城デニー新知事と協調しながら、沖縄振興に取り組んでもらいたい。
改造内閣と時を同じくして玉城県政がスタートする。これを機に、沖縄に基地負担を押し付ける姿勢を改めるよう安倍首相に強く求めたい。