<社説>加計学園理事長会見 真相解明には程遠い


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 国民を愚弄(ぐろう)しているとしか思えない会見だ。学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長が2度目の記者会見をした。内容は不誠実の極みで、真相解明には程遠かった。

 昨年5月、愛媛県今治市での獣医学部新設を巡って安倍晋三首相の関与が問題となった。ことし4月には、柳瀬唯夫元首相秘書官が「首相案件」と発言したことを記録した文書を愛媛県が公表し、新たな展開を迎えた。
 愛媛県はさらに、理事長と首相が面会したと学園から報告を受けたとの文書を国会に提出した。すると学園は、渡辺良人事務局長が県などにうそをついていたと弁明し、謝罪した。それが本当なら、虚偽の報告によって行政を動かそうとしたことになる。
 愛媛県は今治市を通じて同学部に補助金約31億円を支出する。県予算に関わるだけに放置はできない。中村時広知事は学園の責任者が記者会見をするよう要求した。
 追い詰められた理事長は6月19日に初めて記者会見を開いた。しかし、首相との面会について「記憶にもないし、記録にもなかった」と根拠も示さないままに否定し、25分で打ち切った。
 7月には愛媛県議会が、学園に説明責任を果たすよう求める決議を全会一致で可決した。それから3カ月、ようやく学部のある今治市での会見となった。
 今回、加計理事長は、事務長がうそをついたことを「勇み足」と表現し、悪びれた様子もない。全て事務局長の作り話かとの質問に「私はよく存じ上げていない」などとはぐらかした。
 驚いたのは、記者から「愛媛県文書は読んだか」と問われ「聞いてはいるが、見てはいない」と答えたことだ。
 文書を巡る疑念などに答えるための会見ではなかったのか。記者会見それ自体が目的のアリバイ的な会見であることが図らずも露呈した。
 中村知事は、2回目の会見を「率直に評価したい」としたものの、内容は「ふに落ちたかと言えばそうではない。今後とも説明責任を果たしてほしい」と注文を付けた。
 6月の会見は学園本部がある岡山市で開いた。会見開始時刻の2時間前に地元岡山のメディアにのみ伝え、会場に来た他のメディアを閉め出した。今回は全国のメディアも取材できたが、会見開催は3日前に地元記者クラブだけに伝えた。報道の取り扱いを小さくしたい思惑が透けて見える。
 自民党の二階俊博幹事長は「こういう問題で長く時間を取るのは適当でない」と収拾したい意向を示した。長引いているのは不可解な点が多いからであり、解明に消極的な政権の責任である。幕引きはあり得ない。
 この問題が今月下旬からの臨時国会の火種になることは確実だ。真面目に説明するつもりがないのなら、国会が証人喚問をするしかない。