<社説>辺野古対抗措置文書 「権力乱用」はどっちだ

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設を巡り、沖縄防衛局が国土交通相に提出した審査請求書と執行停止申立書の全文を琉球新報が入手した。

 仲井真弘多元知事による埋め立て承認を8月31日に県が撤回して以降、工事は中断している。これらの文書は、防衛局が行政不服審査法に基づき、対抗措置として17日に提出したものだ。
 繰り返し指摘しておきたいのは、行政不服審査法の救済の対象が国民に限られるという点だ。同法は、行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民の権利利益の救済を図る―と明示している。
 だからこそ、2015年に防衛局が行審法に基づく審査請求・執行停止申し立てをした際、国内の行政法研究者93人が、審査請求も執行停止の申し立ても不適法とする声明を発表したのである。「国民の権利救済制度である行政不服審査制度の乱用」と断じた専門家の見解は極めて重い。
 だが政府はこうした指摘を一顧だにせず、またしても条文を都合良く解釈した。国の態度は法治主義を否定するものであり、法治国家の看板を投げ捨てるに等しい。
 県による埋め立て承認の撤回を「行政権の乱用」と批判した政府こそ、強大な国家権力を乱用している。
 防衛局は工事が中断している間も警備、資機材・工事現場の維持管理などで1日当たり約2千万円の余計な支出が生じていると主張した。ちょっと待ってほしい。
 当時の翁長雄志知事が強く反対する中で、汚濁防止膜設置の海上工事、護岸工事を強行したのはほかならぬ防衛局である。県との事前協議も完了していなかった。損害が生じたとしても自業自得だ。
 仲井真元知事が埋め立てを承認した際、県は「工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと」と留意事項に記載していた。
 協議の不備を指摘された防衛局は「協議を行うこと」は同意を得ることまで求めるものではなく、留意事項違反とはならないと主張している。
 協議さえすれば決裂しても構わないという認識だ。そうであるなら、何のための留意事項だったのか。あまりにも誠意に欠ける言い分だ。
 軟弱地盤についても調査が継続中として存在を認めていない。防衛局が提出した文書は全体として詭弁(きべん)、こじつけ、言い逃れが目立つ。
 県は執行停止は認められないとの意見書を送付したが、防衛省の申し立てを国交相が審査するのだから、結果は見えている。公正さを欠いているのは誰の目にも明らかだ。
 このような手法がまかり通るなら、原発から出る核のごみの最終処分場でさえも、地元の同意が不十分なまま建設できるようになるのではないか。問われているのは日本の民主主義の在り方だ。独り沖縄だけの問題ではない。