浦添市の浦添運動公園(ANA SPORTS PARK 浦添)で指定管理者が除草剤を無断で散布していた。設置者の浦添市が把握していなかったとはいえ、大本の責任は市にある。市民の安心・安全を最優先し、再発防止策を講じてほしい。
問題が発覚したのは「公園の芝生や草が枯れてしまった。農薬が使われたのではないか」と市民が指摘したことがきっかけだ。
浦添運動公園を所管する市教育委員会は「指定管理者が除草のため成長調整剤をまいた」と説明した。無害だが今後は散布しないよう指導する―という趣旨の教育長名の文書を近隣に配布している。
ところが「植物成長調整剤」という指定管理者の報告は虚偽だった。除草剤を使用したことを管理者である共同企業体の代表が市に伝え、謝罪した。この時点で初めて、散布した場所への立ち入りが制限されている。
市が定めた「浦添運動公園維持管理作業仕様」には、除草剤を使うのではなく「芝地、草地、法(のり)面を機械刈りまたは手刈りする」と明記されている。指定管理者の行為はこのルールに違反していた。
除草剤は慎重な取り扱いが求められる薬剤だ。使用に際しては、農薬用マスク、手袋、長袖、長ズボンを着用し皮膚に付着しないようにする。現場を縄で囲うなどして人が立ち入らないよう配慮することも必要だ。
児童・生徒を含め不特定多数の人が利用する公園で除草剤を散布することは本来、あってはならない。浦添市以外の県内10市は一様に使用を否定している。那覇市、沖縄市は「除草剤は使わないよう委託業者に伝えている」「草は刈り取る。農薬は住民に不安を与えかねない」とそれぞれコメントした。
市の定めたルールを守らず、断りなく除草剤を使用した指定管理者の行為は許されるものではない。当初、成長調整剤を使ったと事実と異なる報告をしたことが、立ち入り制限などの安全対策の遅れにもつながった。
浦添市の対応も問題が大きい。指定管理者の報告をうのみにして「無害」と断じた。市民の安全を最優先する立場から、もっと積極的に事実を追求すべきではなかったか。
そもそも、市民から指摘がなければ、除草剤が使用され続けた可能性があることを忘れてはならない。
自治体が指定管理者に施設を管理させるのは住民サービスの向上を図ることが主な目的だ。浦添市のケースでは、作業効率が重視された結果、逆にサービスの低下を招いてしまった。
地方公共団体には、指定管理者が正しく機能しているのか監督する責任がある。任せきりにして関与しなければ、業務がおざなりにされても気付かない。絶えずチェックする仕組みをつくることが不可欠だ。