働き方改革は女性が活躍できる職場の実現とセットである。調査結果はそれを雄弁に物語る。
県経営者協会女性リーダー部会(富原加奈子部会長)は、約300社の会員企業を対象に働く女性の意識調査を実施し、1172件の回答を得た。月の平均残業時間が30時間以下との回答は88%に上り、長時間労働が是正されている傾向がうかがえた。一方で職場環境への不満で多いのは「給与」「仕事の属人化」「慢性的な人手不足」「男性主体の働き方が根付いている」などだ。
会社に求めることは「フレックスタイムや時短勤務など」「ライフステージに合わせた働き方」「休暇を取得しやすくする」の順で多く、労働時間の柔軟性や多様性の確保への要望が強かった。
回答者の78%が正社員で勤続年数10年以上が52%と中堅が半数を占める。調査結果は県内で働く全ての女性の意識を反映したものではないが、多くの示唆を与える意義深い内容だ。
その一つが女性の役職への登用だ。回答者の半数が中堅だが、役職のない一般社員が47%、主任・係長クラスは21%にとどまった。男性主体の働き方が根付いていることの表れだろう。仕事の質より長時間労働が可能な人材が評価されるような傾向がある。猛烈に働く役職者を前に、女性が自ら責任ある仕事を敬遠している可能性は否めない。
給与の問題も大きい。年収200万円未満が23%、300万円未満が30%だった。35%が不満を抱く。意欲の面でも「スキルアップに取り組みたい」と前向きな人が9割以上いる中、「子育て中だが仕事が軽い」との意見もある。組織の好意的配慮が本人のやる気をそいでいるかもしれない。
調査結果を踏まえたシンポジウムでは、社員の話を徹底的に聞いて職場の事情に合った取り組みを進めている事例や、タブレットなどの情報通信技術を使って生産性を高めた例などが報告された。富原会長が述べたように、女性が活躍するには働き方改革を実現し、誰でも意欲的に働ける環境をつくることが急務だ。
離職者や人手不足の解消には魅力のある職場づくりが重要だ。実効性のある働き方改革や女性が活躍できる環境の実現こそが魅力につながる。
それにはまず男性の意識を変えることだ。「男性が家事も育児も介護も分担する時代だ。産休・育休をマイナス評価にせず、こういうことをやった人が企業のトップになる環境をつくるべきだ」との金城棟啓琉球銀行会長の指摘に全面的に賛同する。
職場と家庭の関係は、例えれば車の両輪である。一方がパンクすればうまく走れない。職場環境だけではなく、家事や子育てなど家庭での分業も見直す必要がある。真の働き方改革は、社会の根底にある男女の役割分担への観念を変えてこそ実現できる。今はその実践の時だ。