<社説>パイロット飲酒 人命脅かす悪質な行為だ

 飲酒によるアルコール検出で日本の操縦士が航空機を乗務できない事態が相次いでいる。日本航空の副操縦士は10月、ロンドン発羽田行きに乗務予定だったが、大量飲酒で逮捕された。英国の刑事法院は禁固10カ月の実刑判決を言い渡した。乗客らの命を危険にさらす悪質な行為だ。そのことを全ての操縦士は認識する必要がある。

 日航の副操縦士はフライト前日にワイン2本と缶ビール5本を飲んだという。翌日夕にバスでホテルから空港に向かい、空港内の日航の事務所で呼気検査を受けている。しかし機器に呼気を吹きかけず不正にすり抜け、機内に入った。乗務員による相互確認が必要だが、同乗予定の機長2人のうち1人は副操縦士の検査を見ていなかった。
 空港内で機体へと向かう移動バスの運転手が副操縦士のアルコール臭に気づき、保安担当者に連絡した。保安担当者が副操縦士を呼び出したところ「酒は飲んでいない」と大声を出し、目つきがとろんとして、真っ直ぐ立っていられない酩酊状態にあったという。
 英警察当局が実施した検査で、副操縦士から呼気1リットル当たり0・93ミリグラムを検出した。英国法令の上限0・09ミリグラムの10倍を超えている。酒酔い状態だ。この状態で大勢の乗客を乗せて空を飛ぼうとしていたのだから驚く。バスの運転手が連絡しなければ、重大事故につながっていたかもしれない。
 日航の副操縦士が逮捕される3日前には、全日空のグループ会社ANAウイングスの機長が石垣島で飲酒して、翌日の乗務ができなくなり、5便に遅れを出した。この機長は前日にビール、ハイボール、泡盛など11杯を飲み、記憶をなくす状態になっていた。しかも社内規定を逸脱し、乗務開始の12時間前を過ぎて飲酒していた。言語道断だ。空の安全に対して、あまりにも無頓着だ。
 国内で2013年以降、自社で決めた基準値を超えるなど、乗務前に飲酒の影響が発覚した例は国内航空25社のうち7社で計37件あった。さらに過去20年間で操縦士の飲酒が確認された航空機事故が2件起きている。いずれも自家用小型機の墜落事故だが、搭乗者1人が死亡している。大勢の乗客がいる民間機なら犠牲者は甚大に上ったはずだ。
 日本の航空法令はアルコールの検査は義務になっていない。各社の裁量に委ねられている。不祥事が相次いだため、国土交通省は有識者検討会で具体的な基準案をまとめる方針だ。各社も飲酒禁止時間の拡大などに乗り出した。
 沖縄県にとって航空機は観光客の往来にとどまらず、県外を行き来する県民の足として欠かすことのできない重要な交通手段だ。その航空路線の安全運航が揺らいでいる事態は看過できない。官民挙げて再発防止策に取り組んでほしい。