<社説>琉球新報教育賞 共に学ぶ姿勢たたえたい


社会
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 第4回を数える琉球新報教育賞がきょう6氏と1グループに贈られる。今回は、教員との関わりによって子どもたちがどう変容したのかにも注目して選考が行われた。模範となる実践として、受賞者らの一層の活躍を期待したい。

 同賞は、琉球新報創刊120年を記念して創設され、2015年にスタートした。教育現場で真摯(しんし)に子どもたちと向き合い、意欲的に研究に取り組み、創意工夫を凝らしている教員に光を当て、たたえる賞である。各校の校長らから推薦を受け、7人の専門家が選考に当たった。華やかな成果が伴わなくても、地道な努力を評価しようというところにも特色がある。
 今回は工藤かや(那覇市立石嶺小学校)、友利義明(宜野座村立漢那小学校)、仲里研一郎(伊江村立伊江中学校)、屋比久保(北部農林高校)、比嘉一史(宜野湾高校)の5氏と沖縄工業電気工事士育成特別委員会(沖縄工業高校)、さらに池松真也氏(国立沖縄工業高等専門学校・教授)に初めて選考委員特別賞が贈られる。
 受賞者に共通するのは、児童生徒の成長を喜びとし、共に学ぼうという姿勢だ。
 合唱指導に長年取り組み、赴任校を全国レベルに引き上げてきた工藤氏は「練習に向かう子どもたちに、私も真剣に向き合いたい」と語る。
 理科教育の中で地域環境に子どもたちの目を向けさせようと努めてきた友利氏は「子どもたちに自発的な探究心が生まれる瞬間」に喜びを感じてきた。
 楽しさを生徒と共有しながらロボコンに熱中してきた仲里氏は「子どもたちの努力が自分にも刺激になっている」と話した。
 選手、プレーヤーから指導する立場になった受賞者もいる。レスリング選手として輝かしい実績がある屋比久氏は、マットを降りた時の人間性の大切さを強調する。
 演奏家よりマーチングを教えることに魅力を感じ、天職になった比嘉氏は、部活動以外の生徒の日常にも向き合ってきた。信頼関係は生徒の卒業後も続く絆となっている。
 沖縄工業高校の電気工事士育成特別委員会は初めてのグループでの受賞である。電子機械科、情報電子科の教諭らが早朝講座などで生徒の資格試験受験を支えた。生徒が教諭にライバル意識を持つようにと自らも受験に挑んだ教諭もいる。メンバーは「生徒たちからもらう達成感は何物にも代え難い」と話す。
 遺伝情報を解析する技術者の養成に尽力して選考委員特別賞を受ける池松氏は、沖縄の将来を見据えて人材育成を進めてきた。進学して世界レベルの研究成果を出している教え子もいるという。
 受賞者が児童生徒への向き合い方を語る言葉には深い愛情がある。賞の主役は子どもたちだともいえそうだ。受賞者の情熱をたたえ、努力に学びたい。