<社説>米識者基地閉鎖要求 新基地は世界潮流に逆行

 大局的な視座で捉えた本質的な要求だ。米国の識者や元高官らでつくる海外基地閉鎖・再編連合は、沖縄をはじめ欧州、中東など米国外にある米軍基地の閉鎖を求める文書をこのほど発表した。

 冷戦終結後も世界各地にある米軍基地が軍事的な緊張や米国に対する反感を高めたり、環境破壊を引き起こしたりしていることを問題視した。文書の賛同者には、米軍の元高官、米シンクタンク幹部、学者ら幅広い有識者40人が名を連ねる。要求の理由に、維持費が高いことや軍事技術の発展で米本国からでも迅速な対応が可能なこと、中国やロシアなど周辺国との緊張が高まることなどを挙げている。
 国外の基地建設や維持に多額の予算を使うため国内の教育や福祉の予算が減らされている実情がある。こうした状況を踏まえた要求は、極めて現実的な分析に基づく貴重な提言といえる。
 実際、米国は国外米軍を大幅に減らしてきた経緯がある。1945年に2千以上あった施設はベトナム戦争終結や冷戦の後は減少した。2015年には国防予算の大幅削減に伴い、整理統合が進んだ。10年前に761あった施設は3割以上減った。
 一方、在日米軍施設は10年前と比べて3施設の減にとどまっている。日本の場合は、米軍の駐留経費の負担率が高いことが要因だろう。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は年間約1893億円に上る。今回の文書の賛同者であるウィルカーソン元陸軍大佐は在沖米海兵隊の削減が進まない理由に関して「米国内で維持するよりも安いという事情がある」と指摘している。
 トランプ大統領が就任前の大統領選で日本の高い負担率をよく理解せず、在日米軍の撤退を示唆したのは記憶に新しい。在日米軍は日本の負担率によっては米国にとって撤退可能な存在であることを物語る。むしろ日本の方が膨大な対価を払って米軍を引き留めているのである。
 その日本の財政はどうか。国と地方を合わせた借金は既に1千兆円を超えている。社会保障費は少なくとも毎年5千億円規模で増えており、財源確保のために消費税を増税した。その中で進む辺野古新基地建設は、県の試算によると完成までに2兆5500億円の費用がかかる。新基地が本当に必要か検証すべきだ。
 久間章生元防衛相は今年2月、本紙のインタビューで軍事技術の進展を理由に「辺野古でも普天間でもそういう所に基地が要るのか」と必要性を疑問視した。今回の文書の内容と共通する認識だ。
 普天間飛行場の辺野古移設は20年以上も前の計画だ。世界情勢や技術は当時と大きく変わった。基地の沖縄集中は中国など隣国との緊張を一層高める。新たな基地建設などもってのほかだ。米軍削減が進む世界的潮流とも明らかに逆行する。その費用に莫大(ばくだい)な血税を投じるべきではない。