<社説>辺野古土砂変更 国に工事をする資格ない


社会
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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が埋め立て承認申請で県に示した配分割合とは違う土砂を海域に投入していた疑いのあることが分かった。

 防衛局は2013年に県に提出した承認申請の文書で、埋め立て用土砂は岩石以外の砕石や砂などの細粒分を含む割合を「概(おおむ)ね10%前後」と記していた。県に対しても「海上投入による濁りを少なくするため、細粒分の含有率を2~13%とする」と説明していた。
 ところが防衛局は17年に業者に発注した際、細粒分の割合を「40%以下」と指定している。申請文書より4倍も割合を拡大していた。それを裏付けるように、昨年12月に土砂が投入された際、青い海が褐色に濁るのが確認された。赤土など粘土質の土砂が多く含まれているとしか思えない。
 他にも防衛局が県に示した資料には不可解なことが散見される。
 土砂の成分を示す検査結果の文書には検査日が16年3月のものも含まれていた。県によれば1年以内の検査結果が一般的だ。なぜ3年近く前の結果を提出したのか。
 これだけではない。業者が防衛局に出した土砂の性質を示した資料では、土砂は七つの鉱山から搬出していることが示されている。ところが沖縄防衛局が県に提出した検査結果は安和鉱山だけしかない。県が「不適切な結果報告書だ」と指摘するのは当然だ。
 県は昨年12月の土砂投入直後、防衛局に対して土砂の検査結果に疑義があるとして、投入中止と立ち入り検査に応じるよう求めた。ところが防衛局は「環境に問題を生じさせる工事はしておらず、投入を中止すべき理由はない」と回答し、県の要求を拒否している。説明責任を果たしていない。
 県は今月11日、実際に投入されている土砂の調査を提出するよう防衛局に求めた。18日の期限までに納得できる説明がなければ、土砂投入は中止すべきだ。
 防衛局はこれまでも手続きを踏みにじって工事を強行してきた。土砂搬出場所に予定していた本部港が台風の影響で使用できなくなると、予定になかった名護市の琉球セメントの桟橋を搬出場所として使用した。
 またK9護岸に海上搬送した資材を陸揚げしている。これも予定外使用だ。埋め立て工事の順序も承認願書とは違っている。大浦湾側の最奥部から護岸工事を始めることになっていたが、実際は水深が浅い辺野古側の海を護岸で囲み、土砂投入を始めている。県は変更承認が必要だと指摘しているが、防衛局は必要ないと応じていない。
 あまりにずさんだ。これで法治国家といえるのか。もはや国には辺野古新基地建設の工事をする資格はない。