<社説>基地にドローン規制 沖縄を狙った報道弾圧だ


社会
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 日本新聞協会は8日、政府が小型無人機ドローンによるテロへの対策として今国会に提出予定のドローン規制法改正案について、自衛隊や在日米軍基地上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を政府に提出した。政府方針が盛り込まれれば、自衛隊基地や米軍基地への取材が大きく制限される。国民の知る権利を著しく侵害する方針に、新聞協会が反対を示したことは当然といえる。

 規制法案は昨年12月に政府の関係府省庁連絡会議がまとめた「小型無人機に係る緊急安全対策に関する報告書」に基づく。
 報告書で緊急安全対策を講じる必要性として冒頭で挙げているのが9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)日本大会と来年の東京五輪・パラリンピックだ。テロ行為防止を名目に取材メディアなどを除いて会場上空の飛行を禁止する方針を示している。このため禁止措置は大会準備と運営期間の暫定的なものとなっている。
 W杯と東京五輪・パラリンピックについてはテロ行為の未然防止という観点から一定程度理解できる。しかも措置は一時的なものであり、報道メディアは除外されている。
 問題なのはその次に挙げた「防衛施設に係る措置」の項目だ。自衛隊基地と演習場、在日米軍基地と区域の周辺地域上空の飛行禁止をドローン規制法による対象施設に加えることが「適当である」と記している。
 W杯や五輪と違い、暫定的ではなく恒久法だ。しかも報道メディアの除外規定も見当たらない。明らかに報道を規制対象にしている。表現の自由を脅かす措置であり、断じて容認できない。
 ドローン規制法で飛行禁止対象施設に定めているのは(1)国会議事堂、首相官邸など国の重要施設(2)外国公館等(3)原子力事業所―だ。
 新聞協会の意見書は米軍基地が同法の飛行禁止の対象施設に加えられることについて「国民の知る権利に応える報道機関の責務遂行に甚大な悪影響が及ぶことになる」と危惧を示し「在日米軍に関する取材・報道の自由が明確に担保されるべきである」と求めた。
 米軍基地が飛行禁止対象施設に加えられると、最も影響を受けるのは、在日米軍専用施設の約70%が集中している沖縄の報道機関だ。
 琉球新報と沖縄タイムスの両編集局長は今年1月、日本新聞協会の編集委員会で、強く反対する考えを示し、文書でも反対の意思を示した。意見書提出はこうしたことを踏まえたものとみられる。
 米軍基地内ではこれまでも、米軍機の墜落など重大事故が起きている。立ち入ることのできない米軍基地の取材で、小型無人機の撮影取材は欠かせない。飛行禁止は沖縄を狙い撃ちにした報道弾圧だ。米軍基地を対象施設に加えてはならない。