<社説>普天間停止きょう期限 約束ほご、国に重大責任


社会
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 案の定、まやかしだった。米軍普天間飛行場を5年以内に運用停止するという政府の約束は空手形にすぎなかった。その期限を迎えたきょう、改めて政府の偽装と無策ぶりに強い憤りを覚える。

 「沖縄の基地負担軽減」と言いながら、政府はこれまで何度も県民にうそや詭弁(きべん)を重ねてきた。
 経緯を振り返ってみよう。そもそも、5年以内の運用停止は、2013年12月に仲井真弘多知事(当時)が辺野古の埋め立てを承認する最大の条件だった。
 仲井真氏が実現を求め、安倍晋三首相が承認の見返りとして「知事との約束は県民との約束だ」「政府を挙げて全力で取り組む」と明言した。仲井真氏も「首相が言ったことそのものが担保だ」と政府の保証を強調していた。
 その後、政府は起点を負担軽減推進会議が開かれた14年2月18日とした。14年の知事選前には、閣議で「実現に向け全力で取り組む」と決定し、菅義偉官房長官は「日本全体で沖縄の負担を軽減させてもらう」と豪語した。
 しかし、その知事選で翁長雄志知事(当時)が誕生すると、中谷元防衛相(当時)は「地元の協力を得られることが前提だ」と述べ、「全国の協力」から「沖縄の協力」に変節した。
 安倍首相も17年2月に「残念ながら翁長雄志知事に協力していただけていない。難しい状況だ」と県側に責任を転嫁した。自らの不作為を棚に上げて沖縄側に責任をなすりつけるのは厚顔も甚だしい。
 この間、安倍政権が5年以内の運用停止に本気で取り組んだ形跡は見えない。14年4月の日米首脳会談で、安倍首相がオバマ米大統領(当時)に運用停止への決意を表明しただけで、以後は言及がない。
 それどころか、その後の日米会談では、運用停止よりも辺野古新基地の推進を強調している。政府は「普天間飛行場の危険性除去が原点だ」と繰り返すにもかかわらず、自らそれを放棄しているのは断じて許せない。
 仲井真元知事も県議会で再三、「移設と運用停止は切り離すべきだ」と答弁していた。本来は別問題だったのに、5年以内運用停止を人質に、民意に反した新基地建設を迫る姿勢は、構造的差別そのものだ。沖縄は植民地ではない。
 安倍政権は外交努力のかけらさえ果たしていない。危険性除去に取り組む意思があるのなら、沖縄に協力を強いる前に、米側にこそ粘り強く交渉し運用停止を求めるべきだ。国内の移設先を探しだすことにも力を注ぐ必要がある。それこそが一日も早い宜野湾市民の安全につながる。
 政府の強行ぶりを見ていると、もはや危険性除去は眼中になく、新基地建設が目的化している感がある。
 安倍首相は約束をほごにした責任を認め、謝罪すべきだ。新基地を断念し、即時運用停止にかじを切るのが先決だ。