<社説>米朝首脳再会談 非核化に向け協議継続を

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長による史上2度目の米朝首脳会談は、非核化に関し進展がなかった。

 米側は、核兵器の原料製造に使われてきた寧辺(ニョンビョン)の核施設の査察や廃棄を完全非核化への第一歩と位置付けていたが、北朝鮮は制裁の解除を求めた。米国にとっては受け入れ難い要求であり、合意文書の署名は見送られた。
 具体的な非核化措置や朝鮮戦争(1950~53年)の終戦を盛り込んだ合意文書が発表される可能性も取りざたされただけに、一致点を見いだせなかったのは残念だ。
 米朝首脳は、朝鮮半島の非核化を実現するため、引き続き粘り強く協議を続けてもらいたい。
 トランプ氏は昨年6月にシンガポールで金氏と初めて会談し「完全非核化に向けた北朝鮮の努力」を確認した。今回の首脳会談で浮き彫りにされたのは、両国の立場の隔たりが、なお大きいことだ。
 終戦宣言について問われたトランプ氏が「1、2日で全部できるということではない」と述べたように、短兵急に結論が出る問題ではない。
 金氏は核実験と弾道ミサイル実験の中断を継続すると約束した。これから、じっくりと腰を据えて議論していくことが大切だ。
 日本政府としても、非核化のために取り得る手だては全て講じるべきだ。それによって、安倍晋三政権が最重要課題と位置付けている拉致問題も解決に近づくだろう。
 今回の首脳会談で、トランプ氏は安倍首相の求めに応じ、拉致問題を取り上げた。27日夜の会談で、首相の考え方が金氏に伝えられたという。ただ米国頼みの交渉には限界がある。
 人権問題に関心が低いといわれるトランプ氏だ。どれほどの熱意をもって主張したのか。人任せではなく、自らの手で、主体的に拉致被害者の帰国に向けた道筋をつける努力が政府には求められる。首相は「次は私自身が金氏と向き合わなければならない」と述べている。その言葉を必ず実行に移してほしい。
 朝鮮半島情勢は、日本の安全保障政策、とりわけ沖縄の米軍基地の在り方に大きく影響を及ぼす。北朝鮮の非核化が実現すれば「普天間を置く根拠もなくなるだろう」とペリー元国防長官が指摘したのは記憶に新しい。
 政府はこの間、沖縄に米軍が駐留する理由として、北朝鮮などの脅威を挙げてきた。その論法に従えば、朝鮮半島に平和が訪れたとき、米軍が沖縄にいなければならない根拠は大きく揺らぐ。
 名護市辺野古の新基地建設は大義名分を失うはずだ。平和共存の枠組みづくりにも逆行する。県の試算で2兆5500億円を超える公金を浪費することにもなり、百害あって一利なしだ。
 非核化に向けた米朝協議の進展に期待したい。