政府がドローン(小型無人機)規制法改正案を閣議決定した。自衛隊や米軍に対する報道機関の取材活動が大きく制限され、国民の知る権利が著しく侵害される。このような改正は認められない。
飛行禁止区域を自衛隊や米軍の施設に拡大するという政府方針に対し、日本新聞協会や日本民間放送連盟(民放連)が批判する意見を発表し、慎重な対応を求めていた。しかし、政府はこれを無視した。今回も強権的に成立させるつもりなのか。
ドローン規制は2015年に航空法改正で飛行ルールが定められた。そして16年に、官邸や国会議事堂、皇居、外国公館、原発など重要施設の上空飛行を禁止するドローン規制法が制定された。
改正案では飛行禁止となる自衛隊と米軍の施設は防衛相が指定する。そして、警察や自衛隊に、違反したドローンの破壊や捕獲といった強制排除権限が付与される。
日本新聞協会はこのような政府方針に対して「その時々の防衛相の恣意(しい)的な判断や自衛隊員の拡大解釈で、禁止区域が拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される」と意見書で批判した。
米軍専用施設の約70%が集中し、事件・事故の危険、爆音などの基地被害にさらされている沖縄が最も影響を受ける。さらに新たな自衛隊施設も建設されつつある。
山本順三国家公安委員長は「取材活動を制限するという意図は全くない。改正法の趣旨を踏まえ、各省庁で適切に運用される」と述べた。しかし「適切な運用」について具体的な説明はしていない。
菅義偉官房長官も「取材を制限するものではない」と述べた。沖縄の民意を無視して恥じない政権の説明を信じられるわけがない。最低でも取材活動の自由を担保する明確な条文が必要だ。
現在の改正案は、テロ防止を口実にして報道規制を狙うものだと断じざるを得ない。その最大の標的は、米軍基地に住民の厳しい目が向けられている沖縄だ。工事や事件・事故、基地被害を巡って、当局発表の真偽を検証することがますます困難になるだろう。米軍の傍若無人を助長する法改正だ。
県民投票で示された明確な民意を無視して、政府は名護市辺野古の新基地建設工事を続行している。県内メディアは県民・国民の知る権利を背に、工事の実態、環境汚染の状況などを監視してきた。政府がその目をふさごうとしている。
本来、政府がやるべきことは、地位協定を改正して基地の治外法権状態を改善することだ。水質汚染など明らかな環境汚染があっても沖縄県も地元市町村も立ち入り調査ができない。事件・事故の捜査も文化財調査も制約される。
こんな不条理を放置しておきながら、国民の知る権利をないがしろにする報道規制は許されない。