米軍基地が原因と強く疑われる環境汚染に対し、政府はいつまで無為無策を続けるつもりなのか。
県企業局の調査で、発がん性のリスクが指摘される有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)が、米軍嘉手納基地近くの湧き水(カー)からも高濃度で検出されたのである。
PFOSは消火剤や洗浄剤などに使われる化学物質だ。国内では原則として使用が禁止されている。
2016年1月に県企業局が水質調査の結果を公表したことで汚染が表面化した。嘉手納基地内を通る大工廻川や基地周辺の比謝川などで高濃度のPFOSが検出された。その後も改善は見られない。
嘉手納基地の排水が流入する下流側の濃度が高いこと、PFOSを含む泡消火剤を過去に米軍が使用していたことなどから、嘉手納基地以外に汚染源は考えにくい。
だが日米地位協定に基づき施設の排他的管理権を持つ米軍は、基地内での水質調査を拒み、PFOSの使用実態も明らかにしようとしない。このため問題が表面化してから3年以上たった現在も原因は特定されていないのである。
米軍は住民の健康に被害が及びかねない状況に目をつぶっている。汚染の責任を追及されることを恐れているのだろうか。人道に反する不誠実な態度だ。
県は浄化対策と基地周辺の調査のため2億円超の支出を余儀なくされた。沖縄防衛局に補償を求めたが、米軍とPFOSの因果関係が確認されていない―などとして応じていない。因果関係が明確にならないのは米軍が水質などの調査を許可しないせいだ。
日本政府はこのような理不尽な状況を事実上、放置し容認している。結果として、脅かされているのは沖縄県民の安全な暮らしだ。
今回の調査で汚染が地下水にまで広範に及んでいることが分かった。極めて深刻な事態だ。高濃度のPFOSが検出されたカーを何とか元通りに浄化したいが、出どころを突き止めない限り対策の取りようがない。
日本と違って基地への立ち入り権が保障されているドイツで14年にPFOSによる汚染問題が発生した。ドイツ当局の監督の下で基地内の調査が行われ、米軍は基地が汚染源だったことを認めている。ドイツとの格差は大きい。
汚染源を特定し除去に取り組むのは基地を提供している国の務めである。政府は基地内の水質調査をはじめ原因究明のための調査に協力するよう米国に強く要求すべきだ。
普天間飛行場周辺の水質調査でもPFOSによる汚染が確認されている。いまや一刻の猶予も許されない。
県の対応にも問題がある。今回、湧き水の汚染が明らかになったのも市民が情報開示請求で資料を入手したからだ。県民の健康に関わる情報なのになぜ積極的に公表しないのか。対応を改めるべきだ。