体調が悪いのに病院に行くのをためらう。大学に行きたいが難しい―。経済的困窮によって子どもたちが健康上のリスクを抱え、かつ進学の可能性まで摘まれる状況になっていることが、県が公表した県小中学生調査で分かった。
貧困率や就学援助の利用率は改善が見られたものの、経済的理由により医療機関の受診を控えたり、進学をあきらめたりしている状況がある。さらに保護者も子育てに孤立感や負担を感じており、困窮家庭全体への支援が必要なことが明らかになった。
子どもの貧困の背景には低賃金、非正規労働の多さ、長時間労働などの沖縄の就労問題がある。さらに必要な支援策が行き渡っていないという課題もある。調査結果を踏まえ、官民挙げた取り組みを継続する必要がある。
今回の調査では貧困率が前回調査から4・9ポイント改善した25・0%となったが、全国平均の13・9%に比べると依然として高く、4人に1人は貧困状態だ。
アンケートは小学1年の保護者と、小学5年、中学2年の子どもと保護者を対象に実施した。
過去1年間に子どもを病院や歯医者に受診させられなかった割合は前回調査より増え、困窮世帯では約3割に上った。理由に「医療機関での自己負担金を払うことができなかった」を挙げたのは困窮世帯で26・4%となった。
当然ながら治療の遅れは心身の健康をむしばむ。県は昨年10月から未就学児を対象に、医療費の自己負担分を窓口で支払わずに済む現物給付(窓口無料化)を実施しており、一部の市町村も導入している。こうした支援策を小中学生まで拡充し、保護者の費用負担を軽減したい。
家計の苦しさは子どもの選択の自由まで狭めてしまう。困窮世帯の中学2年生では理想的な学歴は大学進学としても、現実には高校までと答える割合が高くなる。
学校や勉強で悩んでいる割合は困窮層ほど高い。家庭の経済状況の不安定さが子どもの学校生活に影響している可能性がある。
行政などの支援策が届いていないことも調査で分かった。無料塾の存在を知っているのは約2割、県内に140カ所以上ある「子どもの居場所」は約3割にとどまった。
小1の困窮層の約41%、非困窮層の約24%が「絶望的だと感じたことがある」と回答した。「不安、イライラなどの感情を子どもに向けたことがある」は困窮層、非困窮層とも8割を超えた。生活の苦しさや子育ての悩みを打ち明けられる人のない孤立感を示している。
子どもたちの健やかな成長のために、沖縄の雇用創出や労働環境の改善に官民挙げて取り組まねばならない。経済的対策だけでなく、保護者の心の支援も必要だ。居場所を欲しているのは子どもだけではない。