<社説>米大統領「安保破棄」 安全保障を考える契機に

 トランプ米大統領が日米安全保障条約を破棄する考えを側近に漏らしていたと米ブルームバーグ通信が報じた。米軍普天間飛行場の移設についても「(米軍の)土地の収奪だ」として、日本政府に金銭的補償を求める考えを示していたという。

 米国が本当に破棄を望むのなら、沖縄の米軍基地を平和につながる生産の場に変えることも可能だろう。辺野古の新基地建設も不要になる。政府はむしろ、これを奇貨として対応を検討すべきだ。
 菅義偉官房長官は「報道にあるような話は全くない。米国の大統領府からも米国政府の立場と相いれないものであると確認した」と述べ、打ち消しに躍起になっていた。
 米国政府の立場はその通りだろう。だが予測不能といわれるトランプ氏だ。このような発言をしたとしても一向に不思議ではない。だからこそ事実ではないかという憶測が一時、外務省内でも広がった。
 本当だったとしても、個人的見解の域を出ず、現実に安保を破棄する事態は起こらないとの見方が強い。貿易交渉を有利に進めるための取引材料として持ち出す可能性はあるかもしれない。
 報道によると、トランプ氏は「日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援をすることは義務付けられておらず、あまりにも一方的だ」と不満を示したとされる。
 日本政府は在日米軍関係経費として毎年巨額の予算を計上している。防衛省の公表資料によると2019年度は基地従業員の労務費、施設借料を含め、駐留に関連する経費だけで3888億円に上る。それ以外にSACO関係経費(256億円)、米軍再編関係経費(1679億円)もある。
 トランプ氏は日本が負担する経費をどこまで理解しているのだろうか。普天間飛行場を巡る認識に至っては、事実を百八十度ねじ曲げている。
 飛行場のある場所は戦前、集落が点在する農村地帯だった。住民を収容所に押し込んでいる間に土地を奪い、戻った時には立ち入りができないようにした。敵国の領土で私有財産の没収を禁じるハーグ陸戦条約にも違反している。
 米大統領がこのような自明の事実さえ理解していないのだとすれば、基地問題の解決などおぼつかない。日本政府はトランプ氏の啓発に努めた方がいい。
 在日米軍専用施設面積の7割が集中する沖縄は日米安保体制の重荷を最も多く背負わされている。基地から派生する事件・事故は後を絶たず、軍用機がまき散らす騒音は我慢の限度を超える。
 米軍の権益を維持・拡大してきたのが安保の実態であり、その不平等性は日米地位協定に端的に表れている。
 今回の報道を契機に、安全保障への関心が高まり、安保を巡る国民的な議論が深まるのならいいことだ。



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