オスプレイ宣撫 離島防衛に絡める安直さ


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 米軍普天間飛行場に強行配備された新型輸送機オスプレイをめぐる二つの「公開」の動きには、きな臭さを感じざるを得ない。

 陸上自衛隊と米海兵隊は米カリフォルニア州で行った日米共同訓練で、陸自隊員がオスプレイに搭乗し、敵に奪われた島を奪還する作戦を報道関係者に公開した。
 沖縄県民の反発や、全国的に設定されている飛行訓練ルート下の地域住民の不安を和らげるために、オスプレイの「安全性」や「有用性」をアピールする狙いがあるのは明白だ。
 自衛隊も持ち出して緊張状態が続く尖閣問題を意識させれば、日米同盟強化もオスプレイ配備も納得してもらえるという算段だろうが、あまりにも作戦の想定が安直で非現実的ではないか。
 国際社会への影響の大きさやその後の維持管理コストなどを考えると、中国が尖閣諸島を「奪う」メリットがあるとは思えない。従って「奪還」のためにオスプレイが役立つこともないだろう。
 射撃管制用レーダー照射問題に見られるように、偶発的な衝突が起こる危険性は確かにある。しかし、関係国はこうした事態の回避にこそ力を注ぐべきであり、「奪還訓練」はむしろ、中国を刺激して危険性を高めるだけである。
 「敵に奪われた島を奪還」というなら韓国が実効支配する竹島も浮かぶが、不思議とそういった話は聞かない。全てが中国の動きをにらんだ南西諸島の防衛強化に向けて印象操作されているようだ。
 オスプレイに関しては、防衛省は将来の導入に向け2013年度予算案に調査研究費を計上しているが、自衛隊内にも、どうしても必要というものではない、といった戸惑いや懸念があるという。
 米軍にとって膨大な開発費をつぎ込んだオスプレイは、何が何でも売り込みたい代物だろう。しかし、重大な欠陥が指摘されている1機100億円の機材を導入する必要が本当にあるのか、防衛省は精査すべきだ。
 こうした中、米軍は来月3日に普天間飛行場で、県民を対象にオスプレイの公開見学会を開催するという。あからさまな宣撫(せんぶ)工作だが、オスプレイに対する反発や不安の大きさに、米軍が焦りを抱いている証左でもあろう。
 既成事実を積み重ねる形で「離島防衛」が喧伝(けんでん)され、オスプレイ配備定着が図られている。注視して対応する必要がある。