IPCC新報告書 危機感と戦略の共有急げ


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 深刻化する地球温暖化の脅威がより明確になった。国際社会は危機意識と対応戦略を直ちに共有する必要がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化による社会や自然への影響を評価した第2作業部会の報告書を発表した。

 7年ぶりの改定となる報告書は、世界規模の気温や海面の上昇により居住地を追われる難民が発生するほか、水や食料の不足により、紛争の危険性が間接的に高まる可能性があると指摘した。温暖化が人間の安全保障に影響が及ぶとしたのは今回が初めてだ。私たち人類は、これまでにない切迫感を持ってIPCCの警告を受け止める必要がある。
 新報告書は、産業革命前と比べて気温上昇が4度を超えた場合、国際目標である2度未満と比べて食料や気象などさまざまな分野で被害が深刻化することを例示し、目標達成の意義を客観的に示した。
 IPCC報告書は、国際的に最も信頼できる科学的知見とされる。温暖化の現状や将来予測を盛り込んだ第1作業部会の昨年の報告は、今のペースで温室効果ガスが増えると今世紀末の平均気温が最大5・4度(20世紀末比4・8度)上がると予測している。
 既に世界各地では、局地的豪雨や熱波などといった異常気象が頻発するなど、温暖化の影響が現れ始めている。
 地球環境と人類社会は、もはや危険水域に入ったと言っても過言ではない。人類が今の産業活動や生活様式を変えずに、温室効果ガスを排出し続けた場合、取り返しのつかない事態を招くことは自明であり、地球の未来は暗い。世界の指導者と市民は今こそ、忍び寄る危機を直視し、生産と生活の在り方を真剣に見直すべきだ。
 一方、日本は先進国の一員として国際社会をけん引する役割があるが、実態は危機感も戦略も欠いていると指摘せざるを得ない。2013年から始まった京都議定書第2約束期間の参加を拒否したほか、20年までの温室効果ガスの排出削減目標を「90年比25%減」から「05年比3・8%減」へと大きく後退させた。安倍政権は、国内外から厳しい目が向けられていると自覚すべきだ。
 来年末には気候変動枠組み条約の下、20年以降の温暖化対策の国際枠組みが決まる見通しだ。安倍政権は原発に頼らない温暖化対策を真剣に追求すべきだ。