米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて沖縄防衛局が実施する海底ボーリング調査で、周辺海域のサンゴ礁が損傷を受けていることが分かった。移設計画の是非が知事選の最大の争点となる中、貴重な自然環境が破壊された事態は極めて遺憾だ。環境保全が担保できない調査事業は直ちに中止されてしかるべきだ。
防衛局は移設に反対する抗議行動を阻止するため、臨時制限区域を設定し区域を明示するためのブイやフロート(浮具)を設置している。サンゴ礁の損傷は、フロートをつなぎ止めるアンカー(いかり)やワイヤロープが台風時の激しい波浪や潮流で動いたことが原因とみられる。
ヘリ基地反対協議会メンバーが15、17の両日、辺野古崎から300メートル沖の水深約6メートルの海域でサンゴや岩盤など複数の損傷箇所を確認した。50センチ四方の鉄板を16枚束ねた重さ約160キロのアンカーがサンゴ礁を削り取った跡は痛々しい限りだ。防衛局は、アンカーやワイヤを設置した全ての箇所でサンゴ礁の損傷がないか速やかに調査を実施し、その結果を公表すべきだ。
台風常襲地帯の沖縄では、台風時にアンカーやワイヤが引きずられる事態は十分に想定され、台風対策を怠った「ずさんな管理体制」(安次富浩ヘリ基地反対協共同代表)も指摘される。防衛局はどのような台風対策を講じていたのかも併せて具体的に説明すべきだ。
そもそも、政府が提出した環境影響評価(アセスメント)の評価書を審査した県環境影響評価審査会は「環境保全は不可能」と県に答申した。今回の損傷について宮城邦治会長は「本体工事が始まる前でもサンゴの破壊が起きるなら、環境保全対策が困難であることを証明している」と指摘する。埋め立てありきの辺野古アセスの無効性が露呈したとも言えよう。
一方、県は事実関係を把握していないとした上で、埋め立て予定海域での岩礁破砕を許可していることから、同海域内であればサンゴ礁の損傷を問題視しない構えだ。どうせ埋め立てで破壊されるということが理由ならば、アセス自体も、保全措置であるサンゴ移植も根底から否定するものであり、言語道断だ。
知事埋め立て承認後の県当局の国への追従ぶりは目に余る。県職員は県民全体の奉仕者であることを今こそ銘記すべきだ。