<社説>知事との会談拒否 県民との対話 閉ざすのか


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 就任あいさつで上京した翁長雄志知事に、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らは会わなかった。露骨な嫌がらせではないのか。

 翁長知事は24~26日の日程で就任後初めて上京し、関係閣僚との面談を求めたが、応じたのは最終日の午後に日程が決まった山口俊一沖縄担当相だけだった。
 外務、防衛両省では同じく26日午後に北米局長、事務次官がそれぞれ会ったが、岸田文雄外相や中谷元・新防衛相との会談は設定されなかった。
 11月の知事選では米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する翁長氏が、移設推進を打ち出した現職の仲井真弘多氏を大差で破った。その約2週間後に、落選した仲井真氏が「知事選のお礼と退任のあいさつ」で上京している。
 その際は安倍首相や菅氏らが面談。首相は仲井真氏を「よく仕事しましたね」とねぎらったという。
 政府は山口氏以外の閣僚が翁長知事と会わなかったことについて、面会要望の伝達遅れや日程の都合などを挙げた。だが特別国会召集中の慌ただしい日程を考慮しても、つい1カ月前の前任者への厚遇との落差は明白だ。翁長氏滞在中の記者会見で菅氏は「年内は会うつもりはない」と突き放した。
 沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏は年明けの来県を検討しているというが、今回「名刺だけでも渡したい」との要望に応じなかったのは、移設反対の新知事に対する意趣返しにしか見えない。
 政権の政策に賛同する知事は歓迎するが、反対する知事には簡単には会わないというのなら、あまりに大人げない対応だ。
 来年度予算編成を前に、政権内には移設反対の知事就任を理由に沖縄振興予算の減額を求める信じられない意見もあるという。基地と振興のリンクを否定してきた方針を覆す主張であり、見識を疑う。
 翁長知事の上京に際し、地元の自民党議員らは政権とのつなぎ役にはならなかった。「敵(翁長県政)に協力する必要はない」との声があるというから、極めて残念でならない。
 安倍政権の今回の対応は、選挙で何度も示された移設反対の民意を無視し、作業を強行している姿勢とも重なる。県民に選ばれた知事との会談拒否は、県民との対話を閉ざすことにもほかならない。
 首相や菅氏は県民の負託を受けた知事と正面から向き合い、その主張を真摯に聞くべきだ。