<南風>私の目、何か変?


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 高校生の頃だった。自分の目が他人と何か違うと感じ始めた。最初に気づいたのは夜盲だった。夜になるとよくモノが見えない。暗がりでは人の顔がよくわからなかった。映画館では、よく友人とはぐれ、迷子になった。そして、動体視力も落ちていった。

 もともとスポーツ、特に球技は苦手だったが、あるとき、バドミントンに参加し、シャトルの動きに目が全くついていけなかった。あれ? 昔はできたはずなのに。運動不足で動体視力が鈍ったのだろうと深刻に受け止めはしなかった。

 しかし、大学生のときに決定的な出来事があった。初冬の寒い中、仲間と連れ立ってしし座流星群を見に行くことになった。満天の星空を求め海岸にたどり着いたわれわれは、砂浜の一角で仰向けに寝転がり、星空観察を始めた。広い夜空には星がきれいに輝いていた。すぐに周りから声が上がった。「あっ、見えた!」「また来た!」と仲間たちは次々と流れ星を見つけていった。

 一方の私は、夜空をどんなに凝視しても流れ星を見つけることができない。星は見えているのだから、流れ星の明るさの問題ではない。夜が更けるとともに気温が下がり、砂の冷たさが背中に染み入ってきた。もはや、苦行だった。仲間たちの歓声を横に、静かな夜空をただ眺めているだけだった。

 もう夜明けも近づいたときだった。私の目でも、夜空が一瞬明るく光ったのがわかった。「おー」と大歓声が、砂浜にいる人たちから上がった。どうやら、ものすごく明るい流れ星が夜空を駆け抜けていったようだった。でも、私には、それすら見えなかった。「さすがにあれは見えただろう?」と友人が聞いてきた。流れ星が見えないという私に気を遣った言葉だった。「うん、見えた」。とっさに私は嘘をついた。
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学校准教授)