<南風>温暖化対策で経済を回そう


社会
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 地球温暖化はうそだ、という主張は、今でも少なからず存在する。温暖化のデータに不備があるとか、空気中にごくわずかしかない二酸化炭素がごくごくわずか増えただけで影響するわけがないとか。こうした意見に対しては、ウェブ上で公開されている2009年の「地球温暖化懐疑論批判」に疑問と反論がまとめられているので、興味のある方はお読みいただきたい。

 種々のデータを見て考えれば、温暖化しているのは明らかだ。では、なぜこうした懐疑論が消えないのだろう。一つは既得権益を守ろうとする動き。もう一つは「お説教が嫌」「自分の暮らしを変えたくない」など、環境科学とは無関係の、気持ちの部分が大きいように思う。温暖化や気候変動の記事に対するウェブ上での否定的なコメントは、おおむねそんな印象だ。

 これまでの温暖化対策というと、冷房は26度までとか、車をやめて歩こうとか、個人の暮らしを制約する話が多かった。これらが、温暖化対策は不便で不快という「印象」につながったなら、古い形の環境活動は見直した方が良い。

 2050年の脱炭素社会の実現には、省エネを徹底する必要がある。それには、新技術や省エネ機器の導入で、無理や我慢をしない形が考えられているし、環境ビジネスにもなる。ただし、家庭のエネルギー消費は日本全体の14.1%(エネルギー白書2021)、産業界の方がずっと大きい。温暖化対策は、家庭や個人の努力のレベルの話ではない。

 日本のエネルギー自給率を見ると、12.1%。大量の化石燃料を海外から買っている。国内で再生可能エネルギーを増やすことは、流出するお金を国内に回すことなのだ。そう考えれば、温暖化対策は社会経済の構造的なアップデートだとわかるだろう。アンチ温暖化で立ち止まるのは、もったいない。
(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄共同代表)