<南風>建物の省エネ


社会
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 夏の暑さもピークを過ぎ、窓を開けると風が心地よい。東京育ちの私が沖縄に来て20数年、もうこちらの気候になじんだが、最初に実感したのは、沖縄の気温変化の小ささだった。

 東京では、1日の中で気温が10度近く変わることがよくある。急な変化に体が追いつかないこともしばしばだ。過去30年間のデータでは、夏の最高気温と冬の最低気温それぞれの平均値の差は30度もある。一方、沖縄は、1日の温度差はいつでも5度程度。夏と冬の差は17度。暑さに体が慣れてしまえば、安定した気候は体への負担が少ない。湿度の高さで不快な時もあるが、冬の東京の冷たく乾いた空気に比べると、沖縄の冬の空気は暖かく湿って、私には優しい。

 さて、温暖化対策を考える際、建物の省エネ基準を高めることは必須である。本土では、暖房によるCO2排出が大きいからだ。新築には今よりも高い省エネ基準を設け、既存の建物にも改修を促す必要がある。

 このとき、欧州などの高断熱・高気密の住宅がお手本となる。調べるうちに、日本は住宅の断熱性能が極めて低いことを知った。人がいる部屋ごとに暖房器具で温め、廊下やトイレ、お風呂は寒いまま。これは光熱費がかかるだけでなく、高齢者が冬にヒートショックで亡くなるという「被害」も生んでいる。

 高断熱の家は、断熱材が日本の通常の2倍、熱が逃げやすい窓は3重ガラスで、窓枠は熱伝導率の高いアルミではなく樹脂。そうすると、一つの暖房でも建物中を一定の温度に保てる。これはぜいたくではなく、ドイツなどでは建築基準で定められている。省エネ住宅は暮らしを快適にし、高齢者にも優しいのだ。

 しかし、沖縄は蒸し暑く、高断熱・高気密だけの構造は合わない。沖縄に合った省エネ住宅はどういうものか、それは次回に!
(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄 共同代表)