<南風>沖縄らしい建築素材


社会
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 建築士の松田まり子さんに、沖縄らしい省エネ住宅の姿をお聞きする中で、印象に残った言葉がある。

 欧州のような寒冷地では、冬に屋外で生きていくことはできない。すると「外部環境は悪」という考え方になる。そのため、徹底して外気を遮断する高断熱・高気密の家が理想となる。しかし、南北に長い日本の気候風土は多様だ。地域で育まれてきた建物は、地域の理にかなっているということ。そして自然と敵対せず、むしろその土地の気候や自然の仕組みを生かして、沖縄らしい風景の中で暮らすことを考えられないだろうかと。

 松田さんは、沖縄らしい建築素材として、花ブロックを活用した家を考案されている。家の外側に、いわばヒンプンのように独立した花ブロックの壁を置いたのだ。この壁は日射を90%も遮りつつ、光は適度に漏れて入る。ブロックを白く塗ることで光が拡散され、より明るく感じるそうだ。また台風時の風を弱め、飛散物がガラスにぶつかるのを防いでくれる。

 花ブロックのもう一つの利点は、適度に風が通ることだ。松田さんは、その土地の風向きのデータを検討し、風の通り道を考える。そして家の中がカビやすいうりずんの季節に、壁の結露を風で吹き飛ばせるよう建物を設計した。常に開けておける窓を設けるなど、高気密とは逆の発想だ。日陰で風があれば、案外涼しく過ごせる沖縄で、まさに土地の気候を生かした考え方だと思う。

 とはいえ、高気密・高断熱の家は本土では省エネ効果抜群だ。沖縄での効果や体感が実際どうなのか、建築の選択肢を比較できる体験施設があれば良いなと思う。これからの住宅が、気候風土と住人のニーズに寄り添いつつ、今後必須となる省エネ化に向けて、沖縄ならではの形に進化していくことを願っている。
(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄共同代表)