<南風>今こそ公共交通の充実を


社会
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 新型コロナ対策で、緊急事態宣言が出されていた間に感じた社会の変化の一つは、車の渋滞が緩和されたことだ。会社や学校がリモートになれば、通勤や送迎の車が減る。観光客のレンタカーも走らない。そしてステイホーム…。関係業界は大変だったと思うが、車からのCO2排出はいくらか減ったのではないか。

 沖縄県の統計によると、2018年度の県の最終エネルギー消費量の42%を占めるのが、運輸部門。その多くが自動車によるガソリン消費だ。産業や家庭のエネルギー消費は13年度と比べて減少傾向だが、運輸だけは増加している。人口増加に伴って、自動車台数も年々増えているためだ。

 沖縄の温暖化対策を考える時、再生可能エネルギーの増加や住宅の省エネ化とともに、交通をどう変えるかが大きな課題だ。今年1月、政府は「2035年までに全ての新車販売を電動車にする」という目標を発表した。あと15年もない。大変な目標だと思うが、これは新車販売だけであって、ガソリン車はまだまだ走っている。全てが電動車に切り替わるには、もっと時間がかかる。

 ならば、以前から県内の課題である公共交通の充実を本気で進める必要があると思う。車は確かに自由度が高くて便利だけれども、それは自分が運転できる時の話。人の一生の中には、免許のない子ども時代があり、高齢になれば免許を返納する。もちろん、事故や病気などで体が不自由になり、運転できなくなることもある。

 そうした人々にも優しい公共交通を、議論するだけではなく作り始める時が、既に来ている。それも、少子高齢化が進み福祉にお金がかかることを考えれば、なるべく建設コストが安く、化石燃料を使わず、将来にわたり持続可能で、島の隅々に行き届く形で。さて、それはどんな形だろう?
(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄共同代表)