<南風>2050年までに電車を


社会
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 沖縄県ではいま、鉄軌道の導入が検討されている。先月にはプロモーションビデオが発表された。那覇と名護を1時間で結ぶのが売りだ。「沖縄鉄軌道計画」という情報サイトからは、公共交通の種類、ルート、費用などさまざまな検討がなされてきたことが分かる。

 ところで私は沖縄に血縁がないが、偶然にも私が来沖した1993年に沖縄に移り住んだ親戚がいる。ゆたかはじめさん。ゆたかさんは日本中の鉄道をくまなく乗り歩き、海外の公共交通についても造詣が深い。沖縄の車社会の行く末を憂慮し、人に優しい交通を考えようと、有志の皆さんと共に、LRT(トラム、次世代型路面電車)を沖縄に作ろう! と提唱する活動を始められた。

 昔は沖縄にも軽便鉄道があった。これを現代風によみがえらせ、デザインがスマートで排気ガスを出さず、乗り降りも楽なトラムが沖縄の街を走る風景を想像して、ワクワクした。

 社会を脱炭素に切り替える時、公共交通のアップデートは必須だ。車のEV化はもちろんだが、バスや電車の方が圧倒的に1人当たりのエネルギーコストが低い。そして今後少子高齢化する中でのニーズを考え、車よりも便利で、多くの人に使いやすい乗り物にすることが大切だ。

 県民が、那覇から名護まで1時間で移動できることを一番に求めるなら、それも良いだろう。

 同時に、鉄軌道と周辺地域を結ぶ多様な交通網(トラムやバス)を、利便性が良いルートで、ICカード1枚で乗れるように整備して、2050年までにはそれが動いていてほしい! 公共交通は本来、土地勘のない観光客にも優しい。観光には乗り物を楽しむ要素もあるのだ。

 ゆたかさんは今年93歳。排気ガスのない那覇の街を軽快に走るトラムを早く見せてあげたい!

(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄共同代表)