<南風>地球温暖化と海草藻場


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 ブルーカーボンという言葉をご存じだろうか。海の生態系に吸収された炭素という意味だ。炭素の吸収といえば、まずは森林。これがグリーンカーボンだ。それに対して、海なのでブルー。国連環境計画が2009年に提唱した。

 環境中のCO2の循環を大ざっぱに見ると、陸域に吸収される炭素が26億トン、海洋は22億トン。海の役割はけっこう大きい。広い海の中には、植物プランクトンがたくさんいて海の生態系を支えている。もう一つ重要な吸収源が浅瀬で、海草(うみくさ)が生える藻場(もば)と、湿地や干潟、河口に広がるマングローブ林だ。近年、この藻場や湿地、マングローブ林が、吸収源として重要だと明らかになってきた。

 沖縄の海といえばサンゴ礁。非常に生物多様性が高く、世界的にも守るべき環境だ。ただ、サンゴが温暖化による白化で弱ってしまうと、炭素を放出する方に傾いてしまう。実は温暖化対策で重要なのは、サンゴ礁に囲まれたイノーの中に広がる海草藻場の方だ。

 海草は、海水に溶け込んだCO2を体に取り込んで成長する。その時の、伸びては枯れる葉の更新がとても速い。そうして葉の繊維が海底の砂に混ざり、やがて埋没することで、炭素が地中へとためられていく。

 そんな海草藻場がまとまってあるのが、例えば本島北部東海岸の辺野古や嘉陽、埋め立て前の泡瀬干潟、そして浦添西海岸のカーミージーから西洲に至る浅瀬だ。

 何だか埋め立て計画がある海ばかり? そう、浅くて平らで、埋め立てしやすいのが海草藻場なのだ。だから全国的に減ってきて、いま見直され始めた。国交省も、温暖化対策で港湾の藻場の状況を調べていくという。

 沖縄の埋め立て計画、海草藻場を残すように見直すことは、これからの時代に必須だと思う。
(鹿谷麻夕、ゼロエミッションラボ沖縄共同代表)