<南風>沖縄「県産品」の発信


社会
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 2月16日付本紙で「農作物の残さ由来の『超吸水性ポリマー』を研究開発するEFPolymer(EFP、恩納村)が環境大臣賞を受賞した」と報じられた。EFPは沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスタートアップアクセラレータープログラムに採択され、2020年に作られたベンチャー企業だ。

 私自身もOIST研究者が開発した技術を商品化するためのジョイントベンチャー組成や契約締結を支援した経験がある。この分野の難しさは、世界各国の高度研究人材と民間企業の提携や利益分配を英語で橋渡しせねばならないことだ。

 ところで私は19年に帰沖するまで7年間香港に住んでいた。香港人・中国人の間で沖縄人気は根強く、香港では県産食品や沖縄観光の促進イベントが頻繁に開かれていた。だが沖縄というと「マンゴーなど南国農産物」「青い海のマリンレジャー」などの情報が前面に出ており、発信が紋切型というか少し単調に感じた。

 沖縄に住むと、農産物や観光以外にまだまだ発信されていない魅力や可能性が多数あると気づく。

 世界の高度研究人材が集まるOISTから生み出される新技術は「県産品」である。続々出現する沖縄出身のアーティストやスポーツ選手も「県産品」だ。沖縄特有の風土から生まれた古典芸能・琉球空手や王国の歴史も「県産品」だ。地理的優位性を活用した物流ハブ機能も「県産品」といえる。米軍基地問題に県民が発するメッセージもある意味「県産品」かもしれない。私もそうだが、そういった総合的な「沖縄の魅力」に引かれて県外から活動の場を求める人も多い。

 県外、国外に発信するには沖縄在住者自身がもっと「沖縄」を知る必要がある。またOISTの技術や沖縄の才能ある人々を発掘・支援・発信する「創造的努力」を続けることが大事だ。
(絹川恭久、弁護士・香港ソリシター)