<南風>ハプニング


社会
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 ジュンク堂ではこれまでイベントを盛んに実施してきた。2009年4月に開店して以来、翌月にはジャーナリストの野里洋さん、FECの小波津正光さんのトークイベントをいち早く企画した。野里氏の「沖縄力の時代」は琉球新報記者であった著者がそれまでの40年の経験を踏まえ、自身の視点でつづった沖縄論。小波津さんの「お笑い沖縄ガイド」は、県外から見た観光地沖縄を地元視点でその矛盾を笑いに変える一冊だ。

 沖縄に来る前、大阪の前店舗では人を呼び込むため、毎週のようにイベントを実施した。そのノウハウを沖縄でも継承した形だ。そのころは芸能人のサイン会などが多かった。あるセレブな女性タレントのこと。東京から大阪に移動するためさまざまな準備の依頼が入る。リムジンの手配から始まり、控室は高級ホテルのスイートルーム! テレビのイメージ通りのスケール感だ。

 そして当日。リムジンを出迎え、部屋に呼ばれると、出版社を交え数名で食事した。同じテーブルで単なる書店の人間が一緒に座っている状況に、何とも不思議で気持ちは食事どころではない。しばらくするとテレビ関係者がやってくると、そこで撮影が始まり、ご本人の身につけている物の話へ。「この指輪、○億円ですね」。え!? 何とも規格外すぎる…。その取材後、イベント会場にはたくさんの人が押し寄せ、大注目のスターを間近で垣間見られたのであった。

 1時間後、電話が入る。指輪を忘れたから控室へ取りに行ってほしいと。億の物を自分が? とにかく急いで行くと他者は駄目だと扉を開けてくれない。セキュリティー上仕方ないが、この間に無くなっていないか、自分事のように緊張してきた。やがてリムジンが引き返し、指輪は無事戻ったのだが、もしもがあったら沖縄にいなかったかも。
(森本浩平、ジュンク堂那覇店 エグゼクティブ・プロデューサー)