<南風>性格と人格


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 精神科医であり心理学者でもあったスイスのユングが、生前に唱えていた思想の一つにペルソナがある。ペルソナとは古典劇で言うところの仮面であるが、ユングは「自己の外的側面」をペルソナ(「人格」)とし、「性格」と「人格」の違いを挙げた。

 誰かを紹介する際に「ユーモアのある人」「物静かな人」「実直な人」「活発な人」と言う説明を用いる場合は、「性格」の話である。一方で、「〇〇会社の営業の人」「〇〇君のお母さん」「子供会の会長さん」「3年2組の先生」など、その人が担っている役割で説明を用いる場合は「人格」である。

 本来生まれ持って変わらないとされている「性格」と、家庭や仕事などで担っており変化し増えていく「人格」が大きく異なると、きっとストレスとなるであろう。本来は「実直」で「物静かな」人物が仕事とはいえ、絶えず元気に明るくユーモアを交えながら大勢の人たちに話しかけないといけない状況はストレスだろう。逆に、「活発」で「冗舌」な人物が、毎日一人で淡々と誰とも会話せずにルーティンワークをこなしていく状況もストレスだろう。

 先日、新聞の見出しで教員の休職や精神疾患発症に関する記事が掲載された。多忙な業務に加え、人手不足も重なり、教員の労務環境の改善は急務となる。

 ストレスマネジメントと言っても、一人一人「性格」が異なるので、同じ業務を遂行しても「無理なく行える」人もいれば「ストレスを感じる」人だっている。自分だってつらくてもやっているのだから、もう少し頑張れないのか…ではない。あなたと他人は異なる性格なので、あなたが感じるストレスと他人が感じるストレスも異なるのだ。

 ストレスマネジメントの最初の一歩は、あなたにとっての「あたり前」を押し付けないことである。
(神谷牧人、アソシア代表)