<南風>沖縄の大人たちへ


社会
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 24時間、看護師や特別な訓練を受けた支援者によるサポートが必要となる重度な障がいがある児童がいる。そのような児童が保育所に通うとなると、保育所に専門の看護師を配置しないといけない。しかも1人ではない。休みなども考慮し2人は配置しなければならない。仮に予算がつけられたとしても、その児童が卒業した場合、その看護師は必要なくなるので、正社員雇用は難しくなる。そうなると採用も難しいのだ。

 このように、多くの課題がある中、福祉行政を担う方々は、日々さまざまな葛藤を抱えている。障がいや貧困、マイノリティーの立場にある方々への支援を行う場合、それ相応の「予算」が必要なのである。行政職員もやりたくないのではない。予算がつけられないからやれないのだ。

 時折、議員が議会でそうした課題を指摘するケースがある。「ウチの市(町・村)ではどうなっているのですか?」と。ただ、そうした議員に質問してみたい。あなたは選挙の時に有権者に対して「少数者の生きる権利を守るために、少しずつでもいいから、みんなで負担しよう!」と増税をお願いしたことがあるのだろうか? 行政に対しては「なぜやっていないんだ」と指摘し、市民には「税金を減らします!」と言っているのであれば、社会的弱者の権利をどのようにして守るつもりなのだろうか?

 今は、教育現場で投資などの授業もあるようだ。今後はそうした知識も必要だろう。しかし個人の所得を増やすことを教える前に、税金の使い道を教える方が大切ではないだろうか。「ゆいまーる」という言葉が本当に沖縄に文化として根付いているのであれば、大人が子どもに教えるべきは資産運用ではなく、税金の使い道であってほしい。世界に誇れる「ゆいまーる」という素晴らしい文化を形骸化させたくない。
(神谷牧人、アソシア代表)