<南風>自分の声と向き合う日々


社会
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 あなたは自分の声を意識したことがあるだろうか。自分の声や話し方が相手に与える印象について、考えたことがあるだろうか。

 アナウンサーをしていると声を意識する機会は多い。ニュース原稿読みやCM収録の中で声のトーンやスピードを調整する必要があるからだ。その中で嫌でも自分の声と向き合う必要がある。そして最初に自分の声を強く意識するのが「初鳴き」の時だろうか。

 初鳴きとはアナウンサーが初めて放送でアナウンスすることを指すが、私の場合は入社3カ月目だった。それまで先輩から指導を受けながらニュース原稿の読みを練習してきたが、いよいよ私の声が電波に乗って全県に届くのだ。午後3時のニュースだった。緊張と不安でどきどきの初鳴きを終えてニュースブースから出ると、フロアにいた全員が拍手をしてくれてホッとしたのを覚えている。やりきったのだと浮かれていた。

 だが直後に手渡された私の放送音源を聞いてショックを受けた。緊張からか声に抑揚はなく、一本調子で内容が頭に入ってこない。今聞いても恥ずかしくてその場で転げ回ってしまいたくなるほど下手なのだ。皆よくあんな下手くそな初鳴きに拍手をくれたものだ。

 とはいえ現実に向き合わなくてはならない。少しでもましになるように、先輩方のニュース読みを何度も聞き、スピードや抑揚、間の取り方などをまねるところから始めた。そうやって積み重ねて15年目。偉大な先輩方ほどではないが、それなりの技術は身についている。

 とはいえ、理想の追求が終わることはない。ニュース読み以外にもリポート、実況、CMなどさまざまな声を求められもする。きっといつまでも満足することはないままなのだろう。先輩方もそうだったのだろうかと思いつつ、今日もニュース原稿と向き合っている。

(小橋川響、ラジオ沖縄アナウンサー)