<南風>災害への備えと危機感


社会
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 近年の災害は大規模化し、被害が甚大なものになっており、被災地の写真や動画を見てがくぜんとすることが増えている。災害に備えることの重要性は誰にとっても喫緊の課題だ。

 自治体の災害対策の取材で移転したばかりの南城市役所新庁舎を訪れたことがある。津波や大雨に備えて高台に設置され、広々とした屋外駐車場がヘリポートや避難者のテント設置場所として想定されていた。マンホールは緊急時のトイレとしても利用可能だ。庁舎内での生活で病気になった人が出た場合は健康な人と距離を置いて生活してもらうためのスペースの確保なども考えられていた。

 一方で海に面した地域の浸水害や避難経路の想定、公園のベンチをトイレやかまどとして使えるものへ置き換えることの検討など、さまざまな課題も抱えていた。取材を通して痛感したのは災害対策の困難さだ。

 沖縄で最も身近な災害といえば台風だ。数年前に県内を通過した台風の影響で、一部地域で数日間停電が続いたことがあった。その際に会社に1本の電話がかかってきた。電話の主は停電地域で暮らしている女性で、冷蔵庫や洗濯機を使えない不便さや子ども達に冷水のシャワーを使わせることしかできないつらさを訴えてきた。

 こちらに電話をする前に電力会社にも現状を訴えていたかもしれない。それでも抱えた不安や焦りが治まらず、メディアに窮状を伝えずにはいられないのだろうと思うと、胸が締め付けられるようだった。その地域の停電復旧にはさらに数日かかった。

 このような状況は毎年当たり前のように起こり得る。いざという時にどれだけの期間、耐えられるかは普段の備え次第だ。限界はあろうが、改めて自分がいざという時に備えてどれほど準備しているかを見つめ直してみてはどうか。

(小橋川響、ラジオ沖縄アナウンサー)