<南風>成人式の最高の贈り物


社会
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 日本で母子健康手帳(母子手帳と略す)は1948年から発行されたが、沖縄では米国統治下なので遅れて61年から発行された。復帰前にもかかわらず、児童憲章が掲載され、沖縄の子どもたちを日本国民として守る、当時の小児保健関係者の意気込みを感じる。

 母子手帳は生まれる前から赤ちゃん一人一人(妊婦)が所持しており、産婦人科医、小児科医、歯科医師などが、妊婦健診、乳幼児健診などで直接記入する成長のカルテであり、保護者が記入する育児日記でもある。また月齢・年齢に合わせた成長の見方が簡潔に書かれた育児書でもある。

 91年の母子保健法改正で母子手帳の交付が県から市町村となり、他の都道府県では市町村ごとに違う母子手帳が使われ、転居時に健診などの保健指導や育児支援などで戸惑うことが多い。だが本県では、市町村から委託を受けた沖縄県小児保健協会が一括して作成発行しているので、同一の母子手帳を使用でき、県内転居時の不都合は起きていない。時代に即して県全体で内容の検討ができ、独自の改編がなされている。

 全国での母子手帳は一般に就学前(6歳)までを対象としているが、本県では2009年に成人(20歳)までの成長記録ができる親子健康手帳(親子手帳と略す)が誕生した。親子手帳の県内全市町村一斉での使用は本県が全国初である。

 就学以降の学年別健康診査、歯科検診の結果が記入でき、予防接種欄にも医師の署名があり、海外留学時の予防接種証明書になっている。自分史を作る授業で親子手帳が大いに参考になっている。次なるステップは子どもたちの多様性(未熟児など)に対応できるデジタル化された個別対応の親子手帳への発展である。

 親から子への愛情と成長の記録が詰まった親子手帳は、成人式の無二で最高の贈り物である。

(宮城雅也、県小児保健協会会長)