<南風>CM収録のお仕事


社会
<南風>CM収録のお仕事 小橋川響、ラジオ沖縄アナウンサー
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 アナウンサーの仕事の一つにCM収録がある。テレビは15秒、ラジオは20秒を基本に用意された原稿を読み上げる。スポンサーや収録担当者の指示によって読み方を変えるCM収録はニュース読みとは違った面白さがある。

 私の初めてのCM収録は自社主催の草野球大会の告知だった。入社3カ月ほどだったと思う。収録担当者からはスポーツイベントのCMだから元気いっぱいに読んでねとアドバイスをいただいたが、緊張で喉はがちがち。最初の収録音源を聞くと声は硬く、元気いっぱいというより叫んでいるだけというひどいものだった。結局20秒のCM1本に30分もかかってしまった。

 私はぐったりしたが、根気よく付き合ってくれた収録担当者には感謝と申し訳なさでいっぱいだった。新人の頃にはこんな気持ちになることが多かった。

 こんなこともあった。これも駆け出しのころ、先輩の女性アナウンサーと掛け合いのCMを収録することになった。内容は夫婦のやりとりなので、感情を込めた演技が必要となる。淡々としたニュース読みとは真逆の技術を求められるが、これが難しい。先輩は「笑顔で読むんだよ。両手の人さし指を口角に当てて上げてみて」とコツを教えてくれる。感情を開放する技術の一つなのだが、もともとの内気な性格と恥ずかしさも相まって収録に大層時間がかかった。

 初めてCM収録をしてから十数年、今もさまざまなCMを担当させていただいている。最初は30分かかった収録も、今では数分で終えることもあるほどには上達した。だが満足できたことはない。収録時はうまく読めたと思っても、放送されたCMを聞くと、思っていたのと違うということばかり。完璧だと思える日は来ないのかもしれないが、それに近づけるよう精進するばかりだ。

(小橋川響、ラジオ沖縄アナウンサー)