<南風>「夢は何ですか」


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 社会人になった先輩が後輩に体験を語るキャリア教育でのこと。最初の発表者は東京出身の26歳の青年でした。彼は大学4年間を沖縄で過ごしました。

 学生時代はチャレンジしたいことのために、いくつものアルバイトでお金を稼いだこと、台湾大学生との交流会を開催したことなど、充実した日々を語りました。
 卒業後は沖縄での就職も考えましたが、「沖縄の企業は緩いな。若いうちに鍛える必要がある」と考えて東京で就職。4年を経て、次のステップは沖縄で事業を計画中ということです。
 熱心に聞いていた学生から「先輩の夢は何ですか」と質問が出ました。
 「夢、夢かぁ。夢はないね。でも夢がなくても困らないよ。やりたいことはたくさんあるんだ。それが夢かどうかは分からない」。同じ質問が他の先輩に。「そうですね、夢は健康で日々活動できることです」。学生は「地味な夢ですね」と反応しました。
 参加者が次々に話し出しました。
 ものづくり一筋で定年退職した高齢者は、公民館で祭りの道具が放置されているのを見て「私の技術でこの道具を修復して昔のように輝かせたい」。50代のパートの女性は「フランスレストランでウエートレスをしていて、カタカナメニューをお客さまに説明していたので外国語をマスターした。テレビは吹き替えなしで毎日見ています」
 若いビジネスマンは「わが家の名字の由来とルーツを調べています」。作業服の青年は「闘牛を飼っています。かわいいですよ」。
 参加者の経験を聞いていると、学生もさすがに「夢は何ですか」と言わなくなりました。話している一人一人の自信をもった姿に圧倒されたようでした。
 夢とは、「やりたいことに向かう力」かもしれません。
(青山喜佐子、オフィスあるふぁ代表)