<南風>「素通り」されないまちづくり


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2012年のNHK連ドラ「純と愛」放映当時、舞台地となった大正区の平尾商店街には多くの観光客が訪れ、周辺の沖縄料理店は行列ができる大盛況となりました。ところが、商店街の中の特徴のない店舗の前は人が素通りするだけ。商店街の活性化には至りませんでした。

 集客イベント等で一時的に人の流れを増やしても、買いたい物や訪れたくなる魅力のない店には人は立ち寄りません。ニーズに応じた魅力づくりを忘れた商店街は必然的に衰退します。

 那覇市の栄町市場商店街は、月に一度の屋台祭りと「おばぁラッパーズ」をはじめとする音楽の力で、見事に活気を取り戻しました。机一つを借りて誰でも屋台を出せ、その面白さに惹(ひ)かれて人が集まり、店を開く人も現れる。一過性の集客イベントではなく、市場での日常生活そのものの魅力を増す取り組みです。

 私は栄町市場が大好きで区長になる前から度々訪れています。栄町市場の成功には、市場の皆さんが他人任せにせず自ら行動を起こし継続されたこと、新しく来た人を受け入れコミュニティーを作る度量があったことなど、地域活性化の大切なヒントが詰まっており、市場パワーに敬服します。

 最近、栄町市場近くのホテルが「市場が昼間も賑(にぎ)わうための拠点となる」「国際通りの観光色と一線を画し、世界のどことも違う栄町市場独自の色合いでまちを染めていく」という面白いコンセプトで大改修を始めました。

 縁あって、大正区の水辺活用のノウハウ等で協力させていただいており、安里川・ホテル・栄町市場が一体となったエリア・リノベーションのお手伝いができればと思っています。

 人とお金を「素通り」させないよう、独自の魅力を磨き上げることが地方創生の鍵。大正区も頑張ります。

(筋原章博、大阪市大正区長)