<南風>川柳の里


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 いざ行かん 名句片手に 北中へ

 北中城村が川柳の里宣言をした。サラリーマン川柳やシルバー川柳が盛んなこの頃だが、沖縄は川柳人口が少ないという。沖縄県川柳協会には、那覇、糸満、豊見城、普天間、北中城三水会と五つの句会がある。

 花崎為継会長率いるわが三水会は立ち上げて3年、村民提案制度の協力を得て北中城を川柳の里と宣言したのである。村の数カ所に川柳ポストを置き、観光や散策で北中城を訪れた人に、思い着くまま川柳を作り投稿してもらおうということである。審査会をして豪華賞品も考えている。対象は観光客だけでなく地元沖縄の人も大歓迎。名句が浮かんだら、ぜひ北中の川柳ポストへ投句を。

 ポストはそれぞれ作り手の異なるシーサーになっていて、設置場所は国指定文化財の中村家、イオンモールの「きたポ」、あやかりの杜をスタートに、北中城村役場前、北中城公民館前と増やしていく予定である。

 ウチナーンチュの心の底に潜むユーモアのセンスは、庶民の生活の中に歌い継がれてきた民謡や芸能の中に数多く見つけることができる。もちろん沖縄古典芸能も知るほどに奥の深さに驚かされるばかりだが。

 思い出すことがある。戦後間もない、私が5歳の頃。時々母親が「ありあり、スウヤーヌパーパーぬ始まいんどー(始まるよ)」と妹を抱き私の手を引いて、ラジオの聞こえる隣の家に下駄をカラカラさせて小走りに駆け付けていた。幼い私に内容は記憶にないが、ラジオを聞いている大人たちの幸せそうな笑顔は覚えている。

 最近小那覇舞天のCDを手に入れた。きっとその時のラジオと同じものだと思う。宝物が一つ増えた。話を川柳に戻すが、あなたのユーモアと風刺あふれる言葉を十七文字に並べて北中のシーサーポストに入れる。人生また楽しくなりそう。
(國吉安子 陶芸家、「陶庵」代表)