<南風>パーラー公民館


社会
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 那覇市曙地域の方々の「公民館が欲しい」という声を受けて始めた「パーラー公民館」。その取り組みが全国の公民館関係者から注目を集めている。

 もともと国は学校区ごとに公民館を設置するように努力義務を定めていたが、沖縄は戦後の特殊事情もあり、公立公民館の設置率は低い。曙地域には公民館がなく、最も近い若狭公民館へも徒歩1時間と離れているため利用しづらい状況にある。市の厳しい財政状況を考えると新たな公民館建設の道のりは遠い。そこで、公民館を施設ではなく、その機能に着目することで、住民のニーズに応えることができないかと考えた。

 パーラー公民館は、公園にパラソルと黒板テーブルを設置するだけで「公民館だ」と言い張って活動している。月に1回程度、ワークショップ、イベントを開催しているが、それ以外は月に3回、パラソルの下でゆんたくできる場を設けているだけだ。曙願寿会の高齢者が語らい、子どもたちが絵かきをしたり、ボール遊びをしたり思い思いに楽しんでいる。今月末は、「うみそら上映会inあけぼの」「ちょこっとハロウィーン」とイベントが続く。これらは多様な人の出会いを促すことを意識しており、準備段階からその輪が広がっていくのを感じている。

 公民館の基本的な機能は「つどう・まなぶ・むすぶ」といわれる。人々が気軽に集い、自らの興味関心に基づいて学び合いながら、人や機関・団体とネットワークを形成することで、生活を豊かにするよう取り組んでいくというものだ。

 全国的に機能不全に陥っている公民館が多い中、施設を持たないパーラー公民館がその本来的な役割を示唆しているといわれる。しかし、その活動は地域の方々の思いによって支えられている。共に公民館の可能性を探っていく取り組みが楽しい。

(宮城潤、那覇市若狭公民館館長)