コラム「南風」 心の病~克服し今~

 前回、30歳の時の過労が引き金となり、心の病に苦しみ続けたことを書きました。心身共無力の中、仕事も十分にできない状況下で公共事業は激減し、不安はますます募っていきました。

 発病から約7年半が経(た)った平成12年冬、ある知人から環境分野での興味深い技術を紹介していただく機会がありました。清流・四万十川流域出身の私にとっては、久しぶりに感じる高揚感だったと記憶しています。その知人は私の病の話をすると、心から親身になって聞いてくれ、「焦らずに一歩一歩前に進んでいこう」と励ましてくれました。何となく暗いトンネルの遥(はる)か向こうに、ぼんやりと出口の明るい光が見えたような感覚を思い出します。
 それからは、その環境技術の勉強に夢中になるうちに、前よりも身体の調子が良い自分に気づき、久しぶりに測量の現場に行ってみると、昼のお弁当がとても美味(おい)しい。どんどんと自信が付いてきて、意欲的に仕事もできるようになり、春には医師から病の完治を告げていただきます。38歳にして全てが新鮮に感じ、以前にも増して筋肉が付いていたことにも驚きました。
 その年の夏には、それまで行くこともできなかった技術士試験にチャレンジし運良く合格。以来、技術士会での地域活動や多くのボランティア活動を行う中で、皆さんから「ありがとう」と感謝されることにたくさんの幸福を感じました。43歳の時には環境技術研究のために仙台の大学院に社会人入学し、その研究過程で沖縄への赴任が決まり、現在に至っています。
 長い間の苦しい体験でしたが、それまではただの会社人間だった自分が、少しは地域社会のことを考え、他人の心の痛みも理解できる人間に成長できたと思っています。今振り返ると、「逆境は最良の教師なり」。私にとっての貴重な勉強と充電だったと感じます。
(鈴木浩一、技術士)