企業経営者と労働組合が賃金などの労働条件を巡って交渉する2024年の春闘が24日、事実上始まった。経団連は東京都内で「労使フォーラム」を開催。歴史的な物価高を上回る賃上げが中小企業に波及するかどうかが焦点だ。デフレで長期低迷した日本経済は、賃金と物価がそろって上昇する好循環の実現に向けて正念場を迎える。
訪中している経団連の十倉雅和会長は、ビデオメッセージで「今年は昨年以上の熱量と決意をもって、物価上昇に負けない賃金引き上げを目指すことが経団連、企業の社会的責務と考えている」とアピールした。
連合の芳野友子会長は講演で労使の認識は一致しているとし「中小企業がどれだけ賃上げできるかがポイントだ」と強調。大手企業との取引価格に適正なコストを上乗せする必要があると指摘し「発注側企業は価格交渉のテーブルに着いてほしい」と呼びかけた。
大手企業を対象とした厚生労働省の集計で、前年春闘は平均賃上げ率3・60%を達成。30年ぶりの水準となった。
日本経済研究センターによると、民間エコノミストらが予測する今春闘での大手企業の平均賃上げ率は3・85%。
中小の人件費や原料費のコスト上昇分を取引価格に転嫁し、さらに給料を増やす原資を確保する必要がある。
岸田文雄首相は経済界に前年を上回る賃上げを要請。連合は闘争方針で「5%以上」の賃上げ目標を示した。多くの大企業は3月中旬に春闘の回答を労働組合に示し、その後、中小企業が続く。
日銀も春闘の結果に注目する。
物価高を上回る賃上げが広がれば、目指す経済の好循環に近づき、景気を支える大規模な金融緩和策から脱却しやすくなるとみている。
(共同通信)